2008年07月17日

熱い声援(2)

「がんばれ、がんばれ、がんばれ! がんばれー!」
 おじさんはちょっとボケちゃってるのかもしれないが、
 声を枯らして一生懸命応援してくれている。
 でも、おじさんの声援がまわりに響いているのは
 ちょっと恥ずかしい。早く立ち去らなければ、
 近所の人々が、なにごとかと顔を出すだろう。

 でも、そこで目にするのは、なんの変哲もないオヤジが、
 これまた暇なオヤジに応援されて、
 なんの変哲もない急坂を自転車で必死に登る姿だ。
 せめてN氏が学生なら、「未来のある若者を応援するオヤジ」
 みたいな風景も微笑ましい気がするのだが。

 しかし、おじさんは真剣だ。
「がんばれ、がんばれ、がんばれ! がんばれー!」
 でも、ちょっとうれしい。人の応援っていいもんだなあ。
 応援されたなんて、高校時代のマラソン以来かなあ。
 うれしさと恥ずかしさでおじさんに軽く手を振って、
 N氏は前を向いて坂を登り続けた。

 しょうがない、これもなにかの縁だ。
 おじさんが応援してくれるんだから、この坂を最後まで登るぞ。
「がんばれ、がんばれ、がんばれ! がんばれー!」
 離れてもおじさんの声は力強く響いている。

 あ~苦しい。
 あ~もうダメだ。ごめんよおじさん。
 最後まではとても登りきれない。
 でも、おじさんの夢だけはこわさないようにするからね。

 N氏は急坂の頂上手前で右折して、おじさんの視界から消えた。
 そこであわてて自転車を降りた。
「はぁ~はぁ~、ぜぃ、ぜぃ、ぜぃ~、ごぁ、げぇ~」
 肩で息をしながら、うしろをふりかえる。
 よかった。おじさんからは見えないようだ。
 苦しいけど、ちょっとうれしいこの気持ちはなに?

                 The End
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (0)

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