2008年07月14日

赤坂の女たち(6)

 となりの席のサラリーマン3人組のうち、
 彼女のそばにいる1人が、目を見開いて半笑いの顔で彼女を見ている。
 ほかの2人は「ふん、くだらない」とばかり、あえて無視、
 べつの話をしている。でも、気配だけは耳で感じている。
 う~ん、こういう反応、東京っぽい!

 いっぽう、N氏に時間が迫ってきた。
 ずっと見ていたいが、そろそろ出なければならない。
 でも、見たい。麺を軽快にすする彼女にくぎ付けになる。
 皿にわけた、あの4本のスペアリブはいつ食べるのだろう。
 最後の最後か。ってことは、失敗したらあれを残すのか。
 残すくらいなら1本の半分でいいからくれないかなあ。
 N氏としたことが、セコイことまで考えてしまう。人生は葛藤の連続だ。

 だが……
 N氏はふだん、大食い番組はきらいなので観ないのだ。
 こんな時代に食べる遊びをしちゃいけないだろ、と思う。
 いや、時代なんて関係ない。
 だんだん悲しさがこみあげてくる。彼女は彼氏がいるんだろうか。
 いつもどのくらい食べてるんだろう。
 だとしたら、食費はどのくらいだろう。

 最初に彼女を見たとき、ずいぶん地味な格好をしてるな、と思ったのだ。
 上下ミリタリー調の服装に、地味なナップサックだけ。
 彼女はおそらく、食事ではなく、戦いにきたつもりなのだ。

 しかし、30分後はどうだろう。今はまだかわいげのある顔だが、
 成功しようが、失敗しようが、終わったとき、彼女は女ではないだろう。
 腹がふくれ、汗だらだらのひどい顔……
 想像すると、見るのがしんどくなってきた。

 最後まで見ていれば、ブログのネタも増えるけど、
 こんなことで自分の時間を奪われるのはなあ。
 N氏は席を立って、店を出た。
「ごちそうさま」
 排気ガスがふたたび肺のなかに押し寄せてきた。

                 The End
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (0)

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