2008年07月02日
真実を書くな(五)
「そもそもこの先生ですが、亡くなったとはいっても、
『晩年に勲章をもらっている』とありましたよね?」
「それが?」
「暴力教師だったなんて記述があったら、遺族がなんていいますかねえ」
くう~! 世論にへつらうタイプめ。いや、自分の身がかわいいだけか。
「で、次は?」
怒りをかみ殺して聞くN氏。
「村のお金を使い込んで自殺した村長が、実名で出てきます」
「著者が村長を責めてるような記述はしてませんけどね。
昭和初期の話ですし」
「でも」
「遺族の問題でしょ? イニシャルにでもしておきますか」
「はい、慎重を期して」
その言い草が官僚的なんだよ。
「それから次いきます」
モチベーションがどんどんダウンしていくN氏。
「『いざ捕虜生活をしてみて思ったことは、坊主や学者に
ろくな者はいなかった』のところです」
「彼らを卑下してると?」
「はい」
「でも、これは日本や世界中の坊さんや学者を指していってるんじゃなくて、
収容所で、この人のまわりにいた人だけを指してるんですよ」
「わかってます。それでも誤解を受ける表現です」
「著者は強調して書いてくれっていってるんですよ」
「ご本人がそうでも、うちの会社が困ります。カットですね」
「けっ!」
N氏は腹にすえかねて、大人げなく悪態をついた。
~ 次回へ続く
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