2008年06月27日

真実を書くな(二)

 家族に自らの生涯をゆっくり語ることなく、老境を迎える人は多い。
 いちばん知って欲しいことを伝えられず、ここまで来てしまった、
 だから全部思い出して伝えなければ、と焦りはつのる。
 なぜ今までできなかったのかといえば、家族への照れもある。
 だが、思い出を掘り起こすことが、辛い世代でもある。
 とくに戦争を「ひとりの兵士」として体験した方なら、なおさらである。

 Aさんは満州に出兵し、現地で敗戦をむかえたが、
 当時のソビエト連邦の軍隊に捕まり、仲間とともに収容所に入れられた。
 N氏が頼まれたのは、むごい戦争と過酷な収容所生活の記録であった。

 取材は終始、重苦しい話となった。
 Aさんは涙を流しながら「こんなことは息子にも話しとりません」
 といいながら、語ってくださった。N氏はそんなAさんの
 胸の内を思うと、事実をしっかり書き留めなければと思った。
 そして、取材から帰って1ケ月後、第1稿を完成させた。

 原稿を書くのはライターでも、クライアントに出すのは編集者である。
 当然ながら、出す前に、出版社(編集者)が原稿をチェックすることになる。
 今回、N氏はうるさくいわれるのを覚悟していた。
 出版社としては戦争の回想記ともなれば、
 書いてほしくない内容が多分にある。くわしくは後述するが、
 とくに「相手を特定し、誹謗中傷した」と
 受け取られるような内容である。

 しかし、N氏はAさんの気持ちを考えると、少しでも「検閲」を
 突破したかった。べつに法律で定められたものではなく、
 これはあくまでもトラブルを避けたい、裁判沙汰になりたくないという
 出版社側の自主規制なのだ。
 どの程度、GOが出るのか。N氏はメールで原稿を送ってみた。

                 ~ 次回へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ↑ ↑ ↑ ブログランキングに参加しています。クリックで応援いただけるとありがたいです。

土日は連休します。また月曜日にお会いしましょう。

投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (0)

コメント

コメントを送ってください




ログイン情報を記憶しますか?

(スタイル用のHTMLタグが使えます)