2008年06月18日
インナーワールドを体験せよ(九)
N氏が妻のことをヨーコさんに頼んだのは理由があった。
彼女はもともと幼い頃より「霊が見える」体質だったのだ。
お盆にN氏の実家に帰れば、
「浴衣をきたN氏の父親(10年以上前に亡くなった)が
自分の前に現われ、かしこまって挨拶された」とか、
家族と親戚で遊びに出かけたときに、
「遺影に写っていたおじさんが、
うれしそうにニコニコしてみんなのあとをついてくる」などという。
知らないはずの人物の人相まで正確に描写するので、
最初は相手にしていなかったN氏も、
彼女がたしかに見えているのだろう、と感じるようになった。
これらについては、いやな印象をもたなかったが
問題なのは、ふつうに暮らしていても、悪いものもみえてしまうことだ。
「ふかふかの奇妙な生き物が部屋の中を走ってる」とか、
「あなたは今、右足で血まみれのカメを踏んでいる」
「今、そっちの窓からお化けが……」などというのである。
彼女はド近眼なのだが、不思議なことに
霊的なものを見るときには、視力に関係なく見えるという。
気味が悪いので本人もN氏もなんとかならないかと
悩んでいたが、解決策はまったくなかったのだ。
そこで頼んだわけだが、N氏にはこれが
どんな結果になるのかは、予想もできなかった。
それから、数日後のことである。
勤めていた会社から帰ってくるなり、妻がいった。
「今日の午前中、なんだか怖かったのよ」
~ 次回へ続く
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