2008年05月21日

船場吉兆事件(2)

 ある男が提案した。
「こういうのはどう? 吉兆のとなりに関連会社で弁当屋を作ってさ、
 そこで全部、前の日の食い残しを出しちゃうんだよ。
 マグロの刺身なんか、ヅケにしちゃったりして」
「いいねいいね!」
「それを500円くらいで売ったら、みんな買うんじゃないの?」
「腐っても吉兆だからなあ」

「じゃ、広告のコピーは?」
「『お金持ちが食べるグレード感が、たった一日の時差だけで、
 庶民のみなさまも味わえます!』ってのは?」
「『歯形のついた唐揚げなら8割引き!』 なんて」
「いいねいいね!」
「『庶民のみなさまへのお下がり弁当です』ってか」

「看板にこういうのは?
 『新鮮だった昨夜の食べ残しを2度揚げ、最調理していますので、
 食品管理は安全です! 吉兆は地球の葉っぱ1枚もムダにしません!』」
「おお、いいねー!」

 ひとりが店の従業員に声をかけた。
「ねえ、ちょっと熱燗ちょうだい!  熱燗!」
「ダメだ、言葉通じないよ」
「ここ日本だろ」
「この店、外人ばっかりだからなあ」
「最近は飲み屋で日本語が通じないなあ」
「さみしいもんだなあ」

 一人が真顔でいった。
「やっぱり食べ物がもったいないよ!
 本当はみんなそうするべきなんだよ!」
「それはそうだけど……」
「やっぱりなんとかしなきゃいけないよ、こういうのは」
「じゃ、吉兆は正しかったという訳か」
「金さえとらなきゃね」
「なるほどねえ」
 しんみりと夜は更けていく。

                 The End
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (0)

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