2008年05月12日
ガンコジジイの正体(1)
N氏はある日の夕方、いつもの床屋さんに向かった。
「こんちは~」
「いらっしゃい」
あるおじいさんが髪をセットされているところだった。
が、なにしろ髪も薄く、少ないので、
「かろうじて、白い青のりが岩にこびりついている」ように見える。
すぐにそれも終わり、ご主人がそのおじいさんの
耳に口をつけるようにして、大声でいった。
「じゃあ、電話入れますね!」
「んな?」
「電話入れますね! 呼びますね!」
「おもがいます(お願いします)」
おじいさんはモグモグと小さく答えた。耳が遠いのだろう。
家族の迎えだろうかと思っていると、
ヘルパーさんがにこやかに中に入ってきた。
「ありがとうございました。それじゃあこれ、お願します」
言いながら、チャックのついた大きなのビニール袋から
千円札と小銭を取り出して、ご主人に渡した。
「ありがとうございました」
ご主人が受け取ると、その人はおじいさんを抱えるように、外に出ていった。
「施設の人ですか?」
「そうですよ。最近はああいう人が多いですねえ。
みんな、施設から外へ出たくてしょうがないようですよ。
ずっといても息がつまるんでしょうね。そんなわけで、
床屋にかこつけて来るんですよ。ただでさえ、おじいさんなんて、
ろくに切るとこなんか、ありゃしないんだから、こっちも困るよねえ!
そういえば、もう亡くなったけど、
1週間に1回カットに来てた、おじいさんがいましたよ」
ご主人は遠い眼をして、
そのおじいさんの思い出話を語り始めた。
~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00