2008年05月01日

緊急リリーフをせよ(六)

「日本の医学界っていうのは、そういう写真なんか載せると、
なんだかんだといわれかねませんのでねえ」
「でも、先生が考案された手術法で、先生ご自身が
 自信をもってらっしゃるわけですから、個人的な意見ですが、
 私は載せてもいいんじゃないかと思いますが」
「う~ん、でもねえ、医学界ってのは閉鎖的でねえ、
 目立つマネをすると、ゴチャゴチャいうヤツがいるんですよ」
「そうですか。じゃ、やめますか?」
「う~ん……」

「まあ、カバーのデザインのご相談にはまだ
 時間もありますから、ゆっくりお考えになってみてください」
「ええ」
「では、恐縮ですが、もう一度、手術の内容に関して
 ご説明いただけますか?」
「わかりました」

 さすが専門分野の手術の内容となると、
 縦板に水の如しの話しっぷりだった。
 が、思い描く文章のイメージとなると、とたんに首をかしげてしまう。
 今にして思えば、この先生、英語で論文を書いてしまうだけに、
 英語的な文脈で、むずかしい専門書のように
 書いてほしかったのかもしれない。

 日本語は非常にシンプルに物事を説明できるツールらしい。
 専門書の解説文などは英語で書こうとすると、
 倍くらいの文章量になってしまう、と翻訳経験のある方に聞いたことがある。
 英語でのコミュニケーションが多い先生にとって、
 日本の書籍にありがちな「ゆる~い」感じがイヤだったのだ。
 専門書ではないのだから、素人に読みやすいほうがいいのだが。

「時間があれば自分で書くんだけど……」
 そう何度もつぶやいていた先生は、最後まで
 自分のニュアンスをこちらに伝えることはできなかった。
 いや、伝えられたとしても、こちらがどの程度までイメージを実現できただろうか。
 その後、緊急手術で打ち合わせが伸びたり、キャンセルになったりして、
 打ち合わせが1カ月伸び、3カ月伸び、半年伸びるうちに、
 結局、出版社側もテンションが落ち、この案件は自然消滅した。
 先生の本は、まだどこからも出ていないようである。
 筆客商売心得「取材に半年かけてりゃ、実りなし」

                    これにて一件落着。
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そろそろ、ニュースネタにもどそうかな~と思いますが、
あと2週間くらい忙しいので、どうしようかなあ……
明日のアップまでに考えます。

投稿者 Napori Takao : 07:00