2008年04月15日

のらりくらり妖怪を攻略せよ(八)

 義理の息子の嫁への不満がおわると、
 次は別れた元のダンナへの不満がとびだした。
「まさかいい歳をして、浮気をされるなんて、私は考えもしませんでしたよ!
 ある日、突然切りだされたんです、別れてくれって!
 それも驚くじゃありませんか! 相手の女性も私と同じ名前だったんです!
 考えられますか?! アタシが45歳のときでしたのよ!」
「それも書けませんよね?」
「はい、書けません! そうそう、前の主人は四年制の大学を出ていましたけど、
 主人は中学しか出てないんですよ! そりゃ、人生というのは、
 いろいろと細かい学歴なんかはどうでもいいことですよね。
 いちばん大切なのは人間性ですものね!」

「それも書けませんよね?」
「はい、書けません! でね、前の主人は大学の先輩が、
 自分の会社に誘ってくれたらしくて、会社でもいい役職について、
 なかなかお給料もよかったんですよ。でも今の主人は
 中学しか出ていないし、あんまり友達もいないんですよ!」
 女性はもはや制御不能のしゃべくりロボットだ。
 こちらの突っ込みなど耳にも入らず、目を見開いて話し続ける。

「一人になってからのアタシはたったひとりでアパート暮らしを
 してたんですよぉ……風の強い日なんか、ひとりでポツンと部屋にいると、
 なんだかすご~くさびしくなって……ウッ……ウッ……」
 とうとう泣きが入り、N氏は録音器を止めた。
 だめだこりゃ。

 取材後、N氏は多少使えそうなところだけを使って原稿を
 十ページほどまとめてみたが、それを読んだ女性は
 「しっくりこない」という。自分が話した内容を文字に起こしてみると、
 「自分という人間はろくな話をしていない」という現実に直面する人は多い。
 結局、女性は自分の思いつくまま、世相についての雑感をまとめ、
 それをN氏がリライトすることになった。
 ところが、その草稿があがってくることは永遠になかった。
 結局のところ、女性は話をきいてもらって安心したのだろう。
 筆客商売心得、「世間話につきあっても仕事にならず」。

                    これにて一件落着。
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (2)

コメント

僕:で、これってギャランテイーってどれくらい出たんですか?

N:それは書けません。

投稿者 スマイル : 2008年04月15日 12:38

スマイルさんへ

コメントありがとうございます。
半分出ましたよ。
実際には4~5回取材に出かけたでしょうか、
原稿も70ページくらいは書いていたと思います。
残念ですけど、早めに結論が出ると、
次の仕事に集中できるというのはありますよね。
昔は「自分の責任だったんじゃないか?」とか思いましたけど、
最近は思わないことにしました。
もし、次にも「強敵」が現れたら、頭がどうかなりそうなので。
でも、義理堅い編集者の方なら、次には優先的に
「優良案件」をまわしてくれますよ。

投稿者 ナポリタカオ : 2008年04月15日 13:01

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