2008年04月10日

のらりくらり妖怪を攻略せよ(五)

 女性はムダ話の途中で、ふと気づいた。
「あら、やだアタシ、またよけいな話、しちゃいましたねえ!
 で、なんだったかしら?」
「趣味のお話なんですが」
「趣味! 趣味は犬の散歩ですかねえ」
 ……まあ、いいか、それしかないなら。

「では、犬の散歩は○○さんにとって、そのどんな楽しみがありますか?」
「それなんですけどね、うちのハッピー(仮名)ったら、かわいそうなんですよ!
 主人はねえ、人間の食べ物あげちゃいけないって言われてるのに
 お煎餅だとかあげちゃうんですよ! それで犬が腎臓病になっちゃった!
 犬が腎臓病ですよ! やですよね、犬が腎臓病! ホホホ!」
 N氏は目をあけたまま、寝たかった。

 こんな会話で取材1日目は終了。
 帰りの新幹線で徒労感がこみあげる。
 N氏はため息をつきながら、同行した編集者、
 安見茂 出蔵(やすみも でるぞう)氏に語りかけた。
「これじゃどうなることやら……」
「そうですねえ。2、3日たったら今日の取材について私のほうからも
 探りを入れてみますよ。話しながら、あの人なりに書きたいことが
 見つかったかもしれないし……まあ、あんまりないような気もしますけどね」
「でも助かりますよ。まあ、とりあえずジャンルはエッセイってことでいきますか。
 あれだけ家庭の話ばっかりしてるのにそこが書けないんじゃ、
 『主婦のつぶやき本』とか『ベテラン主婦が現代社会に物申す!』みたいな、
 やぶれかぶれの内容しかないですね」
「その線でいきますか」

 その後、女性とも打ち合わせをして、本は『ベテラン主婦が~』路線に決まった。
 ところが、2回目の取材で出かけていったN氏に
 女性は困惑した顔で、ある週刊誌をさしだしていったのである。
「困りましたのよ……」
「なんでしょうか」
「アタシのいいたいことがすべて、ここに書いてあるんですの!
 アタシ、先を越されちゃったんです!」
 ああ、またもや問題勃発。

                 ~ 次回へ続く
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (0)

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