2008年04月09日
のらりくらり妖怪を攻略せよ(四)
女性はこちらの心の内を知らずに、ますます目を見開き、
上気した顔でこちらに訴えてくる。
「まあ、このへんの方は都会から越してきた方ばかりだから
知らない者同士でそうなっちゃうんでしょうけど、
私には寂しいことですね、ご近所づきあいがないというのはねえ!」
肝心の本の内容はまだなにも聞いていない。
これ以上話が脱線したら止めなければならないのだが、
あまり早くそういうアクションを起こすと、こちらの行動が
「事務的だ」「誠意がない」と受け取られる場合もある。
時間の浪費につきあいながら、タイミングを見ながら取材することも、
筆客代筆商売には必要なことなのだ。
「で、なんだったかしら?」
「あ、はい、趣味、なんですが……」
「あ、趣味ねえ……それにしてもね、いま思い出したんですけど、
あ、あらやだ、ちょっといいですか、こんな話をして?」
「はあ……」
「イヤなものですよね。義理の息子のお嫁さんなんか、
あ、主人の息子のお嫁さんですけどね、私とまるで話もしないんですよ」
あ~2時間取材していてもまったく書けるものがない……
ご本人はまだ話に夢中だ。
「なんていうんでしょうね、今の若い人はうわべだけっていうんですか?!
しょうがないからおつき合いしているという感じで、
自分のことについていっさい話をしないんですよ!」
そりゃ、相手があなただからでは?
心でつっこむ間合いが早くなるN氏。
「私はこんなふうに、なんでもお話を包み隠さずに話してしまう
性分なんですけどね、彼女は自分のことは一切しゃべらないんです!
愛想笑いっていうんですか、あんな感じ! なにを考えてるのか
わかりゃしないような能面で、なにかこう人間味がないんですよ!」
サスペンスっぽくなってきた。
これをミステリーにしてテレビでやればこんな感じか。
『新興住宅地密室殺人事件! 義理の息子夫婦と後妻の確執!
後妻が奏でる怨念のシンフォニー! かりんとうにダイニングメッセージが!』
動機はじゅうぶんありそうだ……
~ 次回へ続く
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