2008年04月04日

のらりくらり妖怪を攻略せよ(壱)

 数年前のある日のこと、ふたたびA出版編集者、
 安見茂 出蔵(やすみも でるぞう)氏から困惑した電話が入った。
「Nさん、ちょっと困ったことになってましてね」
「いつものくせに」
「へへへ、まあそういわないでくださいよ。それがね、
 なにを書きたいのかはっきりしないんだけど、
 取材しながらまとめてほしい、っていう女性がいらっしゃるんですよ」
「ヤダなあ~そのパターンはいつも苦労するじゃないですか~」

 一般人の自費出版の依頼である。
 ちなみに最近、倒産が問題になったSではない。
 N氏はここの仕事はしていない。
 自費出版でライターに代筆を頼んでくる人は「本を出したいんだけど、
 なにを書いていいかわからない」という人が多い。
 依頼されるほうがこんなことをいうのもおかしいが、
 そういう人は本を出す意味がない。あるいは時期尚早である。

 N氏はもめるのをわかっていながら、依頼を受けるかどうか迷った。
「そこをなんとか頼みますよ」
「う~ん」
 手こずる取材になることはわかっている。
 だが、本当のプロは「できない」とは口にしないものだ。
 それが裏の代筆人、N氏の性(サガ!)なのだ。

 10日後。新幹線の車中には
 火中の栗を拾う決心をしたN氏と安見茂氏の姿があった。
「Nさん、今日の取材をもとに、
 まずは構成案を作って提案してもらえますかね」
 要するに、こんな本にしましょうというテーマと、
 はじまりから終わりまでの骨組を提示してあげるのだ。
「そうですね。でも、さっきの話じゃ、今日になっても
 取材でなにを話していいかわからない、なんていってるんでしょ?」
「ええ。困りましたねえ」

「これだけ時間があっても、まだ考えがまとまらないんですかね」
「そうみたいです。まあ、ご自分の半生を語りたいみたいなんですけど、
 これは本にはできないとか、すぐいうんですよね」
「じゃ、本だすなよ!」
 思わず、つっこむN氏。
「まあ、そういわずに。帰りは酒でも飲んで帰ってきましょうよ」
「なんだか、イヤな予感がするなあ」
「あ、新幹線、到着時間が遅れるっていってますよ」
「ますますイヤな予感……」

                 ~ 次回へ続く
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土日はお休みしま~す。また月曜日にお会いしましょう!
おなかをこわしたのに寿司が食べたい~でもこわい~でも食べたい~でもこわい~

投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (0)

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