2008年03月29日
密室取材に耐えよ(参)
さっそく、室内に通されて取材がはじまった。
くわしくは書けないが、Aさんの特異な幼年時代から、
中学生時代、そして一度は就職しながら
その道に足を踏み入れた体験、
ケンカで勝つための心得など、熱い人生が語られていく。
若干、巻き舌の残る関西弁を交えながら、
「血みどろ」「殺し」「薬物」「チャカ」「警察」「戦争」「跡目争い」
などの物騒な言葉が「にこやかに」「日常会話のように」語られる。
臨場感あふれる物語に圧倒されながらも、
N氏は頭の隅で、もしヒットマンが飛び込んできたら、どうしようか、
と考えていた。いや、物騒な話を聞いたからこそ、
どんどんそんな気分になっていったのかもしれない。
もしもヒットマンが飛び込んできたら……
「取材中なんです!」と必死に説明する前に、
銃口はこちらを向いているはずだ。
よく見ればわかるだろうが、とっさにとびこんできた人間に
子分か一般市民かの違いは判断できないだろう。
N氏は考えた。Aさんと反対側に逃げよう。
Aさんには悪いけど、狙われるのはAさんなんだし……
いや、待てよ、ケンカのプロはいざというとき、
どう動くのかわからないぞ。Aさんがどう動くか見ているうちに
自分もズドン! なんてイヤだ。
そんなことを考えているうちにも、Aさんの話は続く。
「鵜垂 内蔵(うたれ ないぞう)(仮名)の
セコンドについてまわったこともありましてね」
鵜垂はひと昔前に引退した、有名なボクサーである。
~ 次回へ続く
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