2008年03月28日

密室取材に耐えよ(弐)

 N氏は監視カメラに動揺した。
 ちょうどこのころ、あるヒットマンが
 スナックに飛び込んで狙撃をおこない、
 巻き添えでほかの客が死亡した事件が起きた直後である。
 まさか、まだ過去の「お知り合い」とのあいだに
 緊張関係が続いているんじゃないだろうか。

 仕事となれば度胸もすわるが、ヒットマンがいつ現われるか
 わからない状況での取材なんて、想定外である。
 N氏は自分がいきなり緊張の真っただなかへ投げ込まれたと知った。
 しかも、編集の安見茂 出蔵(やすみも でるぞう)氏から
 「今日は営業マンがいけないので一人でお願い」といわれてきたのだ。
 いけないんじゃなくて、怖いだけじゃなんじゃないのか。

 ドアのチャイムを押すと、著者となる
 笑顔のAさんが玄関口で迎えて下さった。
 がっちりした風貌だが、引退したせいなのか、
 鋭い眼光やピリピリした雰囲気は感じられない。

「やあ、遠いところ、すいませんでしたね」
「いえ、こちらこそ。お待たせしてすみません」
「Aです、よろしくお願いします」
 Aさんが手を差し出した。
 その小指の先が……ない。

「ナ・ナポリタカオです」
 慌てて、手を出して握手したN氏だったが、
 小指がないとやはり握力が違うのだろうか、
 ふつうの人よりも、握手の感触が違い、
 小指のあたりにふわっとした感じを受けた。

                 ~ 次回へ続く
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投稿者 Napori Takao : 07:00