2007年11月29日
冷えた誘い
数週間後のある日。午前9時少しすぎに電話が鳴った。
こんなに早くかけてくる人間は、私の取引先では珍しい。
きっと「彼ら」だろうと思った。
「はい、名堀です」
「あ、名堀さん? ホイホイサービスです」
クール大杉だ。
「うちの仕事、2か月くらいやってないでしょ? そろそろ
仕事入れてもらうか、登録しなおさないと、登録消されちゃいますよ」
「どうぞ、消してください」
よくも平然と電話をかけられるものだ。
かけなければいけないほど、人手の確保に追われているのか。
「名堀さんは半年前にもやってもらってるでしょ、
また登録するのは面倒ですよ」
「半年前にはやってません。このあいだやったのが初めてですから」
「何回か、やってもらったでしょ? ライターだって言ってたけど」
この男は初めての面接で私にした質問を忘れて、また聞いている。
「違います。最初のときに『どっかの人と勘違いしてる』って
言ったでしょ。何度言ったらわかるんですか」
働う気がない以上、こちらのほうが立場は上だ。
「あそう」
それでもまだ疑うような雰囲気だ。彼はなおもしつこく、食い下がった。
「で、どうするの?」
「やりませんよ。人が足りないんなら、他人を利用することばかり
考えてないで、あんたがやれば?」
私は電話を切ったが、つい仕事の手がとまった。
私はなんのためにこの仕事をやってみたのだろう。
知らない世界に興味があったのはたしかだが、
37歳の時点で、自分の体力や精神力の強さを自覚したかったのか。
それとも、この頃から傾きはじめた結婚生活のひずみから
一時的に逃げ出したかったのか。
日雇い最終日から数週間後のある日 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00