2007年11月21日

だましうち

 長い30分が過ぎ、野沢が休憩室に入ってきた。
 若い男たちに巻き紙状になった一枚の書類を渡した。
 若い男たちはその紙を食い入るように見た。
「ちゃんと書いてあるから、だいじょうぶだよ」
 彼らは確認して、「どうも」とつぶやいた。

 今日の仕事の明細だろうか。しかし、現金ではない。
 どういうことなのだろうか。私も受取りを待ったが、
 そんなそぶりもないまま、野沢は私に言った。
「どうもお疲れさま。5時になったから着替えちゃってください。
 着替えたらエレベーターの前で待っててくれますか。
 いっしょに送っていきます」

 私は野沢に聞いた。
「あの、ホイホイの人間は、どうやって
 今日の給料をもらえばいいんでしょうか?」
「あれ、聞いてない?! ああ、このあいだ来た人もそんなこと
 言ってたなあ。それじゃあね、事務所の人に電話で聞いてみてください」
 それから、ふと思い出したように声をあげた。
「ああ! そうなんだよなあ、ホイホイの人、よくそう聞くんだよねえ!」

 私が不安な顔をしていたのだろう。安心させるように言った。
「でも、連絡もついてるし、ちゃんとやってくれてると
 思いますからだいじょうぶですよ」
 そういう問題ではない。もともと現地払いという契約のつもりで
 ここに来ているのだ。だが、野沢にかけあっても解決しそうにない。
 大杉の奴……体中の血が逆流した。
「わかりました。じゃ、川崎の駅から電話してみます」

そのまま、野沢は駅まで送ってくれたが、心を暗くしていた。
さっきのことを気にしている様子なのがよくわかった。
彼にしてもホイホイの人間とグルになって、
私をだましたようで気持ちが悪いのだろう。

       日雇い3日目04:40-05:20 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00