2007年11月14日

ぎこちない挨拶

 冷蔵庫に入ると、切り分けられた肉がパック詰めになっていた。
 まだ品番や店名のシールが貼られる前の状態である。
 すでにさっきの3人が待機していた。
「えーと、みなさん聞いてください。こちら今日来てもらった名堀さん」
 これまでのホイホイサービスでの経験から、野沢が
 私を紹介するなどとは思っていなかったので、びっくりした。
「よろしくお願いします」
 マスクをしたままなので、挨拶はモゴモゴした言いかたになる。

 3人はぺこりと頭をさげた。
「よろしくお願いします」
 それから3人それぞれの名前を呼んで、「この人がAさん」などと
 丁寧に私に紹介した。全員防護服にマスクなので、目しか見えない。
 包帯を巻いたフランケンシュタインと大差ない格好の私たちは、
 それぞれロボットのようにぎこちなく頭をさげた。
 服が窮屈なうえに、マスクやハットで顔まで
 ひっぱられているので、全体の動きも自然と直線的になる。

 彼らは私がたぶん今夜限りの人間だと思っているらしく、
 いちおう挨拶はするが、名前を覚えようという
 気配はなかった。それは私も同じだった。

 白いプラスティックのトレーが入った、大きなビニール袋が
 収納棚に置かれていた。野沢は指示して、それを作業テーブルの
 上に持ってこさせた。野沢が私に仕事の説明をした。
「最初はこの食品パックに、中敷を入れる作業をやってもらいます。
 長細いこっちのパックには中敷を2枚重ねて敷いてください。
 ほかのは1枚でいいです」

 この単純作業をはじめようというそのとき、
 若い3人のうちでいちばん日に焼けた男が言った。
「じゃ、今日もジュース1本かけますか?」

       日雇い3日目20:20-20:30 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00