2007年11月13日
コソ泥出没
「じゃ、こっち来てください」
野沢に連れられて廊下を歩いていくと、
30歳くらいの男が野沢を途中で呼びとめた。
「あ、野沢さん」
彼より15歳くらい年上に見える野沢が、とたんに腰を低くした。
「あ、はい!」
男の態度が横柄なのをみると、ここの社員なのか。
彼は機嫌が悪そうに、「ちょっと」と耳打ちした。
私は仕事前の点呼でもあるのかと思って彼らについていくと、
おいおい、そいつは追い払ってよ、という感じで、男は私を指差した。
その野良犬をどけろ、とでも言いたげだ。野沢があわてて私に言った。
「あ、あなたはいいから」
私は5メートルほど離れて彼らを待った。彼らは反対を向いて
コソコソやっているが、声がところどころ聞こえてくる。
「え、やったんですか?」
「うん。あっちに置いてあったよ」
「どうしてそんなとこ、持ってったんでしょうね」
「だから、自分でくすねようと思ったんじゃないの」
「すみません。でも、そんなことするヤツは……」
「まあ、実際そうだったんだからさ。あんなとこ置いとくなんて、
どう考えても、自分で持って帰ろうとしたとしか思えないよ」
「だれかわかんないんですか?」
「うん。わかんない場所だもの」
「すいません。私も気をつけときますから」
「気をつけてよ、野沢さん。ホイホイさんには黙っとくから」
「すいません」
男は憮然として去っていった。野沢が苦い顔でふりかえり、
私を見ると笑顔をつくった。こうやって何人もの人間に笑いかけ、
何人かに裏切られてきたのだろう。笑顔が痛々しかった。
日雇い3日目20:05-20:20 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00