2007年11月05日
第6章 最後の1日 ~エアーポケット
休憩後にまわされた青果のほうは常温だった。
ジャンパーからとたんに汗が吹き出す。急いで半袖になった。
このエリアはトラックがすぐ近くに見えているので、夜が明けて
いくのがわかった。明け方に突然、女の声がしたので振り返ると、
女性ドライバーが荷物を積みにきていた。何時間も男だけで
仕事をしていると、声だけでも女性の存在は気が安まるものだと知った。
古い日雇いらしい、若い男がいた。彼は青いつなぎの責任者に
ときおり部分的に監督を任された。とはいっても、
名前を覚えてもらえるほどの関係でもないらしい。
眼鏡をかけたオタクっぽい男で、まだ20代である。
「この仕事が終わったら、○○を××して」
「あそこのは、この人たちに○○の指示を出してやって」
と責任者に指示を受けると、得意気に私たちに指示を出した。
この男も口のききかたを知らず、ため口でああして、
こうして、と言うので気分のいいものではない。こういうところで
水を得た魚になるのは、世間で友達ができないタイプか、
他人の上に立って偉そうにふるまいたいタイプなのだろう。
次々と新しい日雇いが入ってくる世界に身をおいて、
先輩面をしたいのだ。だが、A運送にいた古い日雇いたちは、
彼よりも年齢が上のせいか、そのむなしさに気づいていた。
日雇いは人生のエアーポケットに落ちたようなものだ。
そこから這い上がったら、その穴にはもうだれも用がない。
多くの人にとって、ここは通過点でしかないのだ。
だが、やりつづけると決めた者は、穴と知りつつ、生きていく。
会社のいいなりとなり、いつのまにか、自尊心は奪われていく。
この若いオタク男は、「他人に命令する」おもしろさを
楽しんでいる最中で、落とし穴にいることさえ、気づいていない。
仕事は7時におわった。
更衣室で8500円をうけとり、私は帰りのバスに乗った。
日雇い2日目01:00-07:20 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00