2007年11月01日
巨大冷蔵庫
一瞬、私は自分がどこかへ拉致されるのかと思ったほどだった。
さっきまでは私たち2人だけかと思ったのに、彼らはいったい
どこに潜んでいたのだろう。彼らが姿を隠さなければならない
理由はなんなのだろう。世間に日雇いの姿を見られたくないのか。
それとも、隠れなければならない事情でもあるのか。
バスは扇島方面にむかっていく。海沿いに
石油コンビナートが巨大な影絵となって突っ立っている。
高い煙突のうえに炎だけが揺れている様子は、
黒い蛇がチョロチョロ舌だけを見せている不気味さがある。
明かりの消えた倉庫街の一角にあるAスーパーのセンターにつくと、
日雇いたちはロビーで名前を記入してなかに入っていった。
私も真似してなかに入ったとたん、半袖の体に震えがきた。
建物すべてが巨大な冷蔵庫になっていた。これではさっきの男が
言ったトレーナーどころでか、もっと厚手の服が必要だ。
ほかの男たちについていくと、自分の荷物をもったまま、
ベルトコンベアーの横を通り、奥へ進むんでいく。
そこには更衣室があり、彼らは黙々と着替えをはじめた。
50歳くらいの男が、バスのなかで飲み終えた缶コーヒーを
捨てにゴミ箱に向かった。彼は片足を引いていた。
ここで働くのは、その「足の状態」と関係があるのだろうか。
私はその男に聞いてみた。
「すみません、上着持ってこなかったんですけど、
どこかにあまってるジャンパーがないでしょうか?」
「お、ここにあるよ、これ。これならいいよ」
彼は近くのロッカーの上に丸めてある
薄汚いジャンパーを手にとって、渡してくれた。
「でも、だれが着たかわからないし、臭いがうつるぜ」
「いいです。助かります。ありがとうございます」
ジャンパーに腕を通すと、汗やタバコの臭気でむっとした。
帰りの電車では、となりの乗客にいやな顔をされるだろう。
ほかの者がやっているように、私も首に自分のタオルをまき、
寒気が入ってこないように準備を整えた。
日雇い2日目19:45-19:55 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00