2007年10月30日

バスは来ない

 クール大杉は上からモノを言うように話した。
「川崎のAスーパーのセンターの夜勤がありますよ」
 食品を一括管理するスーパーの倉庫を「センター」と呼ぶらしい。
「夜8時から朝7時まで、8500円です。行ってくれます?」
 自腹の交通費を引けば8000円を切ってしまう。
「わかりました」

「じゃ、川崎駅X口から夜7時に電話をください。
 駅前にMがありますから、待ち合わせはそこで。
 その前に電話をください」
 最初の待ち合わせと同じだ。直接待ち合わせ場所へ行けばいいのに。
「1時間前にですか?」
「ええ、そこからマイクロバスで送っていきますから、遅れないでください」
 実質的には夜7時から朝7時まで、ということだ。

この段階の話になると、大杉は有無を言わせない口ぶりである。
そして、彼は聞かれたことにしか、答えない。
話しているだけで不快感を感じるタイプだ。

現地まで出かけ、19時に電話を入れた。ところが、20分ほど
かけ続けたが話し中のままだ。ほかの人間と連絡をとりあっているのか。
しかたないので、待ち合わせ場所に出かけた。

Mの入口横に30代前半の男がひとりで待っていた。
なんとなく、日雇いならではの不安感がうっすらと感じられる。
もしかしたらホイホイサービスの男かもしれない。
だが、すぐに声もかけずらかった。

店の前にたたずんでいると、とくに日雇いの悲哀を感じる。
店にはなんの用もないのに、店先でうろちょろしなければならない、
この身の心細さはなんだろう。店の人間が不審がって、
『あなた、いったいなんですか?』と聞いてきたら、
「日雇いの待ち合わせです」と言うべきだろうか。
そのとき、店の人間はどんな顔をするんだろうか。

時間はどんどんすぎて、7時30分をまわってしまった。
大丈夫なのだろうか。せっかくここまで来たのに、
電話をかけているあいだに、自分だけ置いていかれたのか……

       日雇い2日目16:10-19:35 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00