2007年10月02日

お山の大将

単純作業なので、ラクかもしれないと思ったが、そうでもない。
荷物は次々に流れてくる。間違ってほかの地域が紛れ込んで
くるのもしばしばで、これも専用の台車に載せなければならない。
荷物の送り先に書かれた文字は、汚くてまともに読めないものもある。

 荷物をわけていても、松本と松江、伊予市と伊那市など、
 似た地名は間違いやすい。荷受人のところを見なければいけないのに、
 発送人のところを見て、分けてしまったこともあった。
「これ、ちがうじゃないかよ」
 ときどき吉田はチェックにきては、間違いを見つけてぶつぶついった。 

吉田は「荷物を投げるな」と人には言っておきながら、
どすん、どすん、と段ボールを放り投げるようにして、積み上げていく。
中身がつぶれようが知ったことか、といわんばかりだった。
さっきの言葉は形式上だけなのだろう。
たしかに、次から次へとうんざりするほど荷物が運ばれてくると、
実際に、他人の荷物など、どうにでもなれ、という
気分にもなってくる。

「バカ野郎、なにやってんだよ!」
 近くのレーンで、だれかが怒鳴られる声が聞こえてきた。
「さっきから言ってんだろが!」
 怒鳴っているのは、古いメンバーの男だ。30くらいで、
 耳の隠れるくらいの長髪を真ん中分けにした、太っちょである。
 怒鳴られているのは、彼よりも年上の40くらいの男だった。

怒鳴り声は、それからずっと続いた。
しかし、今日初めてここに入って、全部を早く、
正確にやれと言われてもそれは無理だ。太っちょは、
おそらく彼も初日には失敗を重ねたはずなのに、
都合よく忘れているらしい。そして、過去に受けた屈辱や侮辱を、
弱い立場の者に向かって、陰湿に晴らそうとしていた。

しかし、不思議だった。この倉庫にA運送の社員はいない。
どこかから見て監視しているのかもしれないが、
荷物の仕分けはまったくの外部の人間が担当しているのだ。
そこではバイトの古株が同じバイトの新入りの管理を任され、
幅をきかせている。彼らにそんな権限があたえられているのは、
ほかにだれもやりたがらない仕事だからだろう。

ブー! ブー! ブー! ブー!
ふいに、私のレーンのベルトコンベアーで赤いランプがつき、
けたたましくブザーが鳴り響いた。

        日雇い1日目18:50-19:30 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (2)

コメント

ご無沙汰です。
お元気ですか?
今回は異なるバイト先のストーリーですね。

投稿者 MAIA : 2007年10月02日 14:55

MAIAさんへ

コメントありがとうございます。
ご無沙汰してます。
忙しさもひと息つきました。

投稿者 ナポリタカオ : 2007年10月03日 16:11