2007年09月29日
ミーティング
ベテランのなかで、ひとりだけニコニコして
まわりの空気をやわらげようとしている45くらいの男がいた。
コメディアンの『坂田利夫』のようにかん高い声で、
たわいもないことを周囲に話しかけるのだが、
「うん」とか「ああ」とか言うだけで、会話が返ってこない。
彼らは古参の日雇いという、細いプライドの糸で
つながっているだけで、おたがいに信頼感はないようだった。
頭数だけそろえられた、奇妙な集団なのだ。
そのうちにA運送の制服を着た、40代後半の男がやってきた。
「おはようございます。いつも言ってますが、
今日も事故のないようによろしくお願いします」
そして、一拍置いてから長い話をはじめた。
「えーそれと、明日は小渕総理の葬儀が行われるということで、
外国からいろんなVIPが来られるということなんで、警察も
厳戒態勢を敷いております。まあ、ここにも昔、おかしなのが
入ってきたこともありますし、ユニフォームを着ていない者がここに
入ってきたらですね、すぐに『どういうご用件ですか?』と聞いてください。
これは警察官に対してもおなじことです。もしかしたら、
見まわりでくるかもしれません。でも遠慮はいりません。
ここはうちのセンターですから、警察官でも扱いはおなじと思ってください」
話し終えると、彼はうしろをふりむいた。
こちらのテーブルに座らず、うしろのミニテーブルで聞いていた、
50前後の上司が軽くうなずき、話をひきついだ。
「これから梅雨をむかえて、荷物に保冷材などが入ることが多くなります。
荷物の重量もふえるので扱いには注意してほしい。それから、
A地区の『びわ』がひと箱、『ふかひれスープ』がひと箱、紛失なのか
なんなのか、見つかっていません。うちの運転手がちょろまかしたのかも
しれないし、まだどこかにあるのかもしれない。みなさんも
荷物の管理は、徹底して気をつけてください」
最初の男が話をしめた。
「それではみなさん、本日もよろしくお願いします」
「お願いします!」
それまで重い空気を発していた日雇いの男たちは、
この言葉を吐きだしながら、自らの肉体のスイッチを入れた。
日雇い1日目18:15-18:30 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00