2007年09月22日

老獪な若者

「あなたがたは夜勤なので、そのままビルを出たところで
 待っていてください。A運送に行く、迎えの車がきますから」
 大杉は私たち男3人にそう言った。残された女は明日からの
 日勤を希望していたのでそのまま残し、説明するのだという。
 私たちはビルを出て、迎えの車がくるまで待ったが、
 なかなかやってこない。いつまでも突っ立っていても
 仕方ないので、近くにいたニヤケ裕二に話しかけてみた。

「ここの仕事、何度かやってらっしゃるんですか?」
 ニヤケ裕二は男ばかりで息苦しい空気がとぎれたのが
 うれしいらしく、人なつっこい顔になってこたえた。
「いえ、そんなにやってるわけじゃないですけど、
 僕、2ヶ月開けちゃったんです」
「ああ、2ヶ月あけると、また契約書を書けっていう、
 あれですか?」
「はい。ひと月にたった一度でも仕事を入れておけば、
 そんなことないんですけどね」
「さっき、『A通運に行ってもらう』って言ってましたけど、
 どんなところですか?」
「場所はここから近いですよ。でもねえ」
 ニヤケ裕二はニヤニヤして言った。

「おふたりとも夜勤で契約しちゃったんでしょ? 6時~8時ですよね?」
「ええ」
「きついですよ、ほんとに。僕一度やりましたけど、たまんないです。
 もうやりたくないですもん、あれは」
「そんなにですか?」
「ええ、僕はA運送はぜったい「通し」でやらないようにしてます。
 だから10時までA運送でやって、それから移動してべつの
 ところに行きます。 あそこは10時過ぎから、きつい仕事になるんです。
 だからほかで 働いたほうが楽だし、交通費を差し引いても
 結局、 合計の給料はたくさんもらえるんですよ」

 なかなか老獪な戦略だ。自分の身など心配してくれない
 会社と渡り合うには、このくらいの知恵が必要なのかもしれない。

        日雇い1日目17:00-17:20 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00