2007年09月20日
日雇いのシステム
クール大杉は一度奥に引っ込み、それが終わるころ、
もどってきた。そして、今度はニヤケ裕二に親しげに声をかけた。
「中村さんだったんだ。前にもやってくれたよね」
やはりさっきのことを調べるついでに、全員の名簿を調べたのか。
「はい。契約が切れちゃったんで、再契約にきました」
ニヤケ裕二はそのときだけ笑顔をつくったが、
大杉に心をひらいているようには見えなかった。
彼も金のために仕方なく、この仕事にもどってきたのだろう。
なによりも、この会社を信じていないのがよくわかる。
今度はだいたいのスケジュールを聞かれ、説明を受けた。
「日勤の場合は、必ず前日に予約の電話を入れてください。
夜勤の場合は、当日の夕方5時までです」
それで間に合うのか。人が手配できないときはどうするのだろう。
受け付けるほうも、綱渡りだろう。
「交通費は出ません。各自負担でお願いします」
大杉はちょっと力んで強調した。これでは、
なるべく住まいから近いところを選ばざるをえない。
「じゃ、ビデオを見てもらいます。これはA運送の社内教育用
ビデオとして使われてるものですが、みなさんの業務に
必要なところだけを見てもらいますから」
A運送のユニフォームを着た人間が、マニュアル通りに演じてみせる。
途中で、ふいに大杉はビデオを一時停止させた。
ベルトコンベアーの上に作業員が乗ったシーンである。
「これだけは気をつけてください。台車の上に乗らないこと。
ベルトコンベア-の上にも絶対乗らないこと。慣れた人なんか、
すいすい乗っちゃう人がいるんですけど、みなさんは絶対に
乗らないでください。怪我しますから。とくにコンベアーね、
すべりやすい車輪がついてるから、足をすべらせて怪我しますから」
ばかじゃないか、そんなことやるもんか、とこのときは思った。
まさか、さっそくその晩、自分が命令されて、
乗る羽目になるとも知らずに。
日雇い1日目16:10-16:50 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00