2007年09月05日

夕焼け

「タヌキの現場も行ってるんでしょ?」
「今はあっちとこっち、半々くらいかな。あいつ、
 あいかわらずうるさくてしようがねえや、ハハハ!」
 海を見ながら私たちは笑った。

もうタヌキも、生意気な高卒の測量士も、私にはなんの関係もない。
従う必要も遠慮する必要もない。彼らはしょせん、現場だけの
お山の大将なのだ。ともに働き、おなじ釜の飯を食い、酒を飲み、
風呂に入った仲間とは、立場も生活の密度もちがう。

赤い夕日が海を照らすと、子どもがやってきた。
海面に白い腹を見せて浮いている魚を網で掬いとり、
ビニール袋に入れる。袋をのぞきこみ、無邪気な笑顔で
走っていった。母親に見せて、「そんなものを!」と叱られている
顔が目に浮かんで、ほのぼのした思いになった。

作業が終わるころになると、夕日の照りかえしで
全員の顔が真赤に染まった。やや離れて振りかえったとき、
夕日が作りだす土工たちのシルエットが眼にうつったが、
それは映画のエンディングのように美しかった。
その風景の中に溶けこんでいる私自身を遠くから見つめてみたかった。

 晩、同室の二人と最後の酒を飲んだ。
「満期かあ、いいなあ」
 平松はさびしそうに言った。
「これからどうするんだい、新人さん?」
 三崎が聞いた。
「やりたいことをやります」
「い~ね~、若いってのは」
 もう食堂に名前を掲げられて、働くこともない。
 気分はもうお客さんだ。明日、目が覚めて朝飯を食ったら、
 金を受け取り、チェックアウトするだけだ。

「しっかりやんなよ、名堀君」
 平松が力強く声をかけてくれた。
「はい。いろいろありがとうございました。
 平松さん、三崎さん、お世話になりました」

      飯場生活22日目15:30-20:00 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (0)

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