2007年09月03日
満期日
飯場に入って22日目。盆休みや雨をはさんで、とうとう
私は16勝6敗で満期をむかえた。
ところが、この日、乗るはずのポンコツバスが駐車場で
また動かなくなった。運転手にとっては、出発前にエンストしてくれて幸運だ。
新人の運転手が起こした事故のあとも、堀内は修理に出していなかった。
それでも仕事の穴をあけるわけにいかず、ボンネットを開けて、
懸命にエンジンをのぞきこんでいる。だが、待っている土工たちは
だれも手を貸さないばかりか、関心さえ払わず、立ち話をしていた。
私も知らん顔で待っていると、
菅谷が片手で顎を押さえ、顔をしかめながらやってきた。
「ニイちゃん、今日は徳山組なの?」
「はい」
「車動かないんなら、どう、俺と代わってくんねえか?」
「どうしたんですか?」
彼はさも痛そうに歯をシーシーと吸った。
「歯が痛くてたまらねえんだよ。休んで歯医者行こうと思ってさ」
「金あるんですか?」
言ってから、失礼だったと思ったが、彼は気にしなかった。
「なあに、競輪でとったからよ」
お盆に痛飲しながら熱く語った焼鳥屋の夢など、とっくに
どこかへいってしまったような雰囲気だ。もしかしたら、
歯が痛いのも嘘で、遊びに行くのかもしれないが、
こっちには関係のないことだ。
私たちは堀内に事情を話し、事務所にあがった。
立ちまわりのうまい菅谷は、さっさと事務の老人と交渉を成立させた。
この日は、あくまでも菅谷の代役なので運転手ではない。
『作田興業』の仕切る現場に行くように言われ、
待っていると作田興業の『オヤジ』が車で迎えにきた。
私は三崎、ジャイアンツといっしょに車に乗った。
そこは東京湾に流れこむ河口の護岸工事だった。
現場で作田興業の土工と合流するのかと思っていたが、
そうではなく、オヤジは私たちといっしょに汗を流した。
飯場生活22日目07:00-09:30 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00