2007年08月31日

金がもらえない

 この日でとうとう14日間、勤めあげた。
 15日契約なので、明日で満期をむかえられる。
「ようやく明日だね。よくがんばったね、名堀君」
「ありがとうございます」
 平松と話していると、三崎がけげんな顔になった。
「あれ? 明日はいいとしても、明後日は火曜じゃねえか?」
「そうでしたっけ? どうかしたんですか?」

「じゃもらえないぜ」
「えっ?! なぜです?」
「おかしな話なんだけどさ。給料袋持ってくる事務のオバちゃん
 いるだろ、あれが火曜は定休日なんだ。だから月曜が
 満期になっちまったやつは火曜の朝には給料を受け取れねえのさ。
 だから火曜まで働いて、水曜の朝、給料もらわなくちゃならねえんだよ」
 平松が怒った。
「そんなのありかよ!」
「ああ」
「1日延びるってことですか」
「そういうことだな」
「じゃ、あと2日……」

最初の話でそんな条件は聞かされていない。だが、腹は立たなかった。
「あと5日やれ」と言われたら拒否したが、飯場に愛着さえ感じていた私は、
もう1日ここにいられるのが、むしろうれしくもあった。

事務のオバちゃん、というのは社長の妹らしいのだが、
50前後の彼女はいつもスーツを着て現れた。2階の階段を登っていく
姿を見かけると、男たちは顔を紅潮させながら、ねっとりした目線を
背中や腰に這わせるのだった。彼女はその視線を恐れ、
侮蔑しながら、女王のような威厳で階段を上っていく。

多くの土工たちにとって、近くに現れる女性といえば、
彼女ひとりだけだ。口では「おばちゃん」と呼んでいるが、
満たされない彼らにはじゅうぶんに欲望の対象となりうるのだった。

      飯場生活20日目17:00-20:00 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (0)

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