2007年08月30日
人情飯場
「アンちゃん、このおかず、うまいぞ、食ってみな!」
「すいません」
「おい、こっちに白菜の漬物もあるから、とんなよ!」
「ありがとうございます」
「味噌汁もあるから飲みなよ!」
「はい、すいません」
「ここのはおばさんの手作りだからよ、うまいぞ!」
翌日の昼、私は『田村組』の飯場の食堂で、
田村組の土工たちにかこまれて、頭を下げていた。
田村組はタヌキの会社の下請けである。寺本建設からは
数人が千葉のある町の水道管取り換え作業に派遣されたのだが、
昼飯は現場から移動して、田村組の飯場の食堂でとることになった。
私たちはこちらの飯場から持っていった弁当を開いたのだが、
あまりに貧相な弁当を見かねた彼らは、みんなでとりかこみ、
自分が食うまえにこちらの弁当に、たくさんおかずを入れてくれた。
人の心のあたたかさに触れただけでなく、「おばさんの手作り」という
言葉を聞き、そのおばさんが横から顔を出してお茶をいれてくれると、
胸に熱いものがこみあげて、しばらく箸が持てなかった。
大きく切った漬物や、きんぴら牛蒡は格別の味だった。
私は食後も感激にひたっていたのだが、
横にやってきた西田がなにげなく言った。
「なんか果物が食いたいなあ」
彼は入ったばかりの40前後の男である。飯場でそんなことを
言い出す土工はいないので、虚しい願望を口にしているだけか、
と私は聞き流した。このタイプは寺本建設では長く続かないだろう。
西田は色白の小太りで、頭を丸坊主に剃りあげている。
上半身全体になにやら大きな刺青があり、いつも長袖で作業していた。
肉体労働にはいかにも不慣れな様子で、「いやあ暑いねえ。
こんなもんいれてるから、脱ぐわけにもいかないよ」と言いながら、
シャツのボタンをはずし、風を胸元にいれた。
穏やかそうだが、一瞬、鋭い視線を周囲に向けて、
「俺に近づくな」という警告を発する、不気味な男だった。
彼もまた、飯場に逃げこんだ1人なのかもしれない。
この日を終えて14勝6敗(-9千円)。明日働けば、満期で出られる。
飯場生活20日目12:10-17:00 ~ To be continued
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人気blogランキングへ
↑ ↑ ブログランキングに参加しています。クリックで応援いただけるとありがたいです。
コメント
コメントを送ってください