2007年08月29日
第15章 満期日 ~事故
「どうしたんですか?」
「とうとうポンコツバスが事故を起こしたぜ!」
「えっ?」
「今日、タヌキの現場にむかう途中で、新しい運転手が
カーブを曲がりきれなくて、どこかの家のブロック塀に
突っ込んだらしい!」
「ああ、とうとう、やりましたか」
突っ込んだ場所は予想がついた。おそらく、私が初日に
ぶつかりそうになった、狭い急カーブに面していた民家のブロック塀だ。
ブレーキのきかないあの車でスピードを出したら、曲がりきれない。
いつかだれかがやるだろう、と平松と話していたのだが。
「乗ってたヤツらにたいしたことはなかったらしいけどよ」
「やっぱりあの車、修理出してなかったんですね」
「これでまたホリさん、みんなに恨まれるだろうぜ」
事故を起こした運転手には悪いが、いっそのこと、ポンコツバスを
木端微塵にしてくれたら、永遠にさよならできるのに、と思った。
翌日、翌々日と2日連続で雨が降り、仕事は休みになった。
食堂から部屋へむかうとき、私とおなじくらいの
年の若い男がいるのに気づいた。新入りだ。
どういうわけか、ブリーフ1枚で洗濯機の前に立ち、
服を洗っている。全身が真っ白でいかにも頼りない。
そばを歩いていたジャイアンツがからかった。
「そんな格好でウロチョロしてると、オカマ掘られちまうぞ!」
「あ! は、はい!」
若い新入りはペコペコ頭をさげながら、この裸をどうしたものかと
キョロキョロした。その様子がおかしくて、私たちはどっと笑った。
彼の姿は、わずか数日まえの私そのものだ。
不安だろうと思うと親しげな気持ちが沸いてきたが、
満期まで現場で会うことはなく、それきりになってしまった。
あと2日働けば満期だというのに、ここへきての休みはつらい。
部屋にいるだけで、部屋代や飯代など3千円が引かれてしまい、
これで13勝6敗(-9千円)だ。
飯場生活17日目18:00-19日目20:00 ~ To be continued
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