2007年07月27日
スパイ
ここにいる全員から問われている気がした。
同情でなければなんなのだ。興味本位か。
自分自身が強くなりたいという思いのほかに、
取材をしてみたいという気持ちもたしかにあった。
それで潜りこんでスパイをしにきたのか。
仲間となった人達にそう思われるのが恐かった。
返す言葉がなかった。
ふいに菅谷は私の顔を正面から見た。
「おい!」
「はい」
面くらって返事をした。
「もうこんなとこ、来んなよ!」
彼はいろんな意味で言っているのだ。
「はい」
それから、ふん、と鼻で笑い、話題を変えた。
「なあ、昨日、車の運転で気抜いてたろ?
こんなふうに調子に乗って」
左手でハンドルを持ち、右手の二の腕を窓枠に乗せた
ポーズをした。たしかにY字路に突っこんだ直前、
そんな態度をしていたかもしれない。
そのまま、昨日のことをしつこく言うのかと思ったが、
菅谷は泥酔していて、自分でもなにを言っているのか、
わからないのだろう。こんな酒の飲み方では友人を
怒らせたことも一度や二度ではないだろう。だが、私に
からんだのはそのときだけで、すぐほっとした表情に変わった。
「俺、もういちどやりなおそうと思ってんだ」
そろそろ菅谷の告白をもてあまし気味だった男たちは、
へえ、と笑顔になった。
「また焼鳥屋で働きたいなあ。あれなら自信あるんだ」
「やってみなよ」
平松が励ました。私たちもうなずいた。
「うん。もういちどやってみるよ、俺」
私は菅谷の笑顔を初めて見た。
ダンディは一人、笑わなかった。
飯場生活10日目10:00-10:30 ~ To be continued
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