2007年07月25日

熱海で袋叩き

 すでに酔いがまわっている菅谷は冗舌だった。
「ここはひでえとこだよなあ、俺らを人間扱いしねえもの。
 宮崎の飯場、行ったことある?」
 ちょっと自慢げに言った。
「ないねえ、そんな遠いとこ」
「ああ」
 平松と三崎がこたえた。ダンディは黙って聞いている。
 彼は遊び人の菅谷をあまり好きではないのだ。

「いいとこだったよ。ここらみたいに出稼ぎばっか集まるところ
 じゃなくてさ、あっちは土地の人間しか集まらねえからさ、
 みんな親切で東京もんにもやさしくしてくれてね……」
 なつかしそうに眼をほそめてから、私に聞いた。
「自分、いくつだっけ?」
「19です」
「ああ、そうか。前に聞いたな」

 ふう、と息をついた。
「ちょうど自分ぐらいのころ、俺は熱海に住んでたな。
 あのころが青春だった」

 言いながら青春という言葉を使ったのに照れたのか、
 苦笑している。菅谷の長話をはじめる気配に、
 みんなが黙って聞こうという雰囲気になった。

「俺さあ、あのころ焼鳥屋で働いてたんだ。そこで地元の
 パン助2人と知りあってね、女2人と毎晩やりたい放題だ……
 そのうち、あのあたりの元締めの親分に呼びだされて、
 もうメッタメッタに殴られちまった……半殺しにされて、
 しまいにはガードレールに突きとばされたとこまでは覚えてる」

「伸びちまって、あとの記憶がないんだな、気がついたら病院だったから……
 たぶん、地元の人が連れてってくれたんだろう。それから
 熱海を逃げ出して池袋に出て、麻雀で飯を食うようになったんだ」

「麻雀で食ってたんですか?」
 私が驚いて聞くと、歪んだ顔をした。
 胡坐をほどき、すねた子どもがやるように、
 ドスンと前へ両足を投げ出した。

      飯場生活10日目09:20-09:40 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (0)

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