2007年07月23日
まきなおし
そのうち、「それでよお」とだれかが話題を食堂のオヤジに
もどしたことから、ふたたび彼らは話に夢中になり、
私は無視されてしまった。また声をかけたら
気の短い土工たちのことだ。うるさがるだろう。
部屋にもどって事情を説明すると、平松が舌を出して言った。
「いいよね、だまっときゃ」
「だれか通りかかったら入れてやりゃいいよ」
三崎もうなずいた。
「じゃ僕が買ってきます」
昨夜のことをもうだれも気にしていなかった。
飯場はこういうところなのか。
ひとつの失敗に、いつまでもビクビクしなくてもいいのだ。
また同じ失敗をしないように気をつければいいんだ。
鉛のように重かった胃が、風船かと思うほど軽くなった。
今日は飲むぞ!
うきうきした気分で酒屋でビール、一升瓶、
つまみを買いこむと大きなビニール袋が3つにもなった。
ひとりで持つのはたいへんだったが、歩きながら
その重量感に躍動をおぼえていた。
今日はコソコソと部屋へ向かう必要はない。
酒は大っぴらに飲めるのだ。
休みとあって、飯場全体がおだやかな空気に包まれている。
1階のほかの部屋でも酒盛りが始まったらしく、
酔っぱらいの声が響いていた。
「部屋にいるだけで金引かれるなんて、
前の飯場じゃなかったぜ!」
「まったくよ、そんなのは飯場の責任払いだろうが!」
ほかの部屋からも大声が聞こえた。
「俺はよ、高校野球なんか、なくなっちまえばいいと思ってんだ!」
「なんだよ、どこが悪いんだよ!」
「あんなの見せモンじゃねえか!」
「ちがうぞ! 野球ぎらいにはわかんねえ!」
「そういうこと言ってんじゃねえの、俺は! 床屋行ったってどこ行ったって、
中継のテレビつけてやがんだろが?!
こっちは見たくもねえのに迷惑だってんだよ!」
「あんた床屋行ってんの、その頭で! ギャハハハ!」
「うるせえんだよ、くそったれ!」
飯場生活10日目08:20-09:00 ~ To be continued
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