2007年07月10日
新入り、ふてくされる
「すいませんでした!」
初老の男にあやまると、相手は有利だと見てとったらしく、ムキになった。
「なにやってるんだよ!」
「すいません」
「だからさあ、こっちはちゃんと止まってるんだよ。道がいくら
狭いからって、もっと大きくまわってもらわなきゃ困るよ!」
バスのボディには20センチほど、相手のバンパーを黒くこすった
跡がついていたが、接触したセダンのバンパーは右角がいくらか
すり減っているだけだ。男は腹を立てているが、
バンパーなのでそれ以上文句も言えないようだ。
さっきは頭が混乱していて気づかなかったが、考えてみると、たしか
白いセダンは停止線より1メートルは頭を突き出していたような気がした。
しかし、たしかかどうか、はっきりしないのが悔しい。
オヤジの文句を聞いているうちに、はっきりしないことに対して
一方的にあやまるのが、なんだかばかばかしくなってきた。
私はどうでもいいという気分になり、口先だけで
「すいません」をくりかえした。これ以上は応じるもんか。
あまり調子に乗って言ってきたら、こっちだって言い分がある。
予想もしないことが2度も続けて起こると、人間は
開きなおるのだろうか。どうせたいしたことじゃない。
あれもこれも責任をとらされてたまるか。
こんなバスを運転させる堀内が、いちばんの悪者じゃないか。
そうだ、こうなったら、ここでもめて堀内を引きずりだしてやろう。
オヤジ、もっと怒るなら怒ってみろ。
私はあからさまにふてくされた。
すると、のっそりと横にやってきたダンディ熊沢が言った。
「すいませんねえ……なにせ新米なんで、許してやってくださいよ
……お願いします」
やはり彼の態度は滑稽だった。ポケットに手を突っこみ、
低い声でなだめるように話すのだが、まるで古い
仁侠映画から借りてきた芝居のように思えた。
飯場生活9日目18:20-18:30 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00