2007年07月09日

接触事故

やってしまった……接触事故は初めてだ。
事故を起こした車が50メートルも進んでから
止まる心理がよくわかった。初心者にはなにがおこったのか、
どうすべきかの判断がとっさにできないのだ。

「おい!」
車を停めないうちに、男の声がそとから聞こえた。
バックミラーには、信号待ちの白いセダンの運転席から
初老の男が首を出してわめいているのが見えた。

路肩にバスを停めた。男が車をまわして近づいてきた。
こんな場合、どうすればいいんだろう。
車内の人間を当てにできないと知りながらも、
助言だけでもと思った私は助手席の伊藤を見た。

が、彼は知らんぷりで前を向いたままだ。
うしろを振りかえった。熊沢も菅谷もジャイアンツも、
一瞬困ったような顔をしただけで、すぐに
ほかの連中とおなじ、「見物人」の顔になった。

「早く行けよ!」
 だれかが言った。
「そうだよ。早く行って話つけてきたほうがいいよ」
 菅谷がつづけて言った。
 私は運転席のドアを開けて降りた。

ふん、どうせ、あんたらはそんなもんだよな。
威張りくさって先輩面してるくせに、いざとなったら、
いちばんの下っ端をかばってやるだけの器量もないのかよ。
一瞬でもだれかが助けてくれるかもしれない、と
甘いことを考えた自分がバカだった。
それよりなにより、運転手なんか引きうけて、
やっぱりこのザマだ、くそっ!

歩き出すと、あとからバスのドアを開けて、
だれかが降りてくるのがわかった。ダンディ熊沢だ。
いっしょに交渉してくれるのか。
助けてくれてうれしいという思いもあったが、
ひとクセあるダンディのことである。
あとでなにを言われるかわからない、という思いが重なって、
まず自分が相手と面向かい、切り出さなければと思った。

      飯場生活9日目18:10-18:20 ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 10:47