[2007年07月] アーカイブ

再起 (7月31日)

手酌で日本酒を飲んでいたダンディもすっかり酔い、 猫背がもっと丸くなった。それから、 「この仕事は俺にあってるんだ」「俺...

涙は娘のために (7月30日)

 こんどは平松が自分の話をはじめた。 「俺さ、ここにくるまえは建設会社の土工兼運転手やってたんだよ。  運転手当も1日2...

土方の誇り (7月28日)

 それから菅谷はさっきの告白を照れたのか、 「用事を思いだした」と言うと、2階の10人部屋へ帰った。  菅谷の人生の残滓...

スパイ (7月27日)

ここにいる全員から問われている気がした。 同情でなければなんなのだ。興味本位か。 自分自身が強くなりたいという思いのほか...

第12章 過去の陰影 ~悔恨の人生 (7月26日)

「勝てればいいけど、負けりゃ青いぜ。土方でもやって返さなきゃ  ならねえしよ……でも人間って不思議なもんだよなあ。  定...

熱海で袋叩き (7月25日)

 すでに酔いがまわっている菅谷は冗舌だった。 「ここはひでえとこだよなあ、俺らを人間扱いしねえもの。  宮崎の飯場、行っ...

帰る家はなく (7月24日)

 ダンディ熊沢の部屋の前を通ると、開け放したドアの  むこうで、こちらに丸い背中を向けたまま、ダンディが  ぽつんとすわ...

まきなおし (7月23日)

そのうち、「それでよお」とだれかが話題を食堂のオヤジに もどしたことから、ふたたび彼らは話に夢中になり、 私は無視されて...

朝から宴会 (7月21日)

飯場の1階からまわりはじめたが、半分以上の土工たちは 家に帰っているうえに、ほかの男たちは朝から酒を 買いに行ったらしく...

盆休みの前借金 (7月20日)

翌朝、盆休みの前借金の5千円が各自に渡された。 「食堂のオヤジ」と呼ばれる、調理係の力士の 上司にあたる老人が、事務所で...

家に帰りたし 金はなし (7月19日)

 酔った平松は饒舌になった。 「まったくやんなっちゃうよなあ。もどってきたら、  明日から3日間、盆休みだっていうじゃね...

カムバック (7月18日)

 振りかえると、風呂場の軒先で、  金歯と銀歯を見せて平松が笑っていた。 「平松さん!」  電燈が背後からあたっているの...

はるかなる月 (7月17日)

こんなところにいてはいけないんだ。 今夜荷物をまとめて逃げ出そう。 夜中に大手町から上野まで歩いたじゃないか。 あれを思...

第11章 盆休み ~涙の風呂場 (7月16日)

だれもいない風呂場で、初めて大きな檜の浴槽に入ってみた。 最後なので、白い垢がところどころに浮いている。 風呂はまだ熱か...

ゲイにガンとばす (7月14日)

飯場に帰れば、さっき同情していたジャイアンツが いつものように噂をばらまいて、明日には 飯場中の土工が私の失態を知り、あ...

やり場なき怒り (7月13日)

ふたりの気づかいはうれしかったが、 気休めにはならなかった。自分でも整理のつかない感情が グツグツとたぎってきた。私はた...

立往生 (7月12日)

 バスが突然、エンストをおこしたのだ。ファミリーレストラン近くの  路肩に停めて、ふたたびエンジンをかけるが動かない。 ...

オヤジ、脅される (7月11日)

 相手のオヤジは煮えきらなかった。私の態度も  気にいらないのだろう。顔をしかめて、  ほんの少し減った自分の車のバンパ...

新入り、ふてくされる (7月10日)

「すいませんでした!」  初老の男にあやまると、相手は有利だと見てとったらしく、ムキになった。 「なにやってるんだよ!」...

接触事故 (7月 9日)

やってしまった……接触事故は初めてだ。 事故を起こした車が50メートルも進んでから 止まる心理がよくわかった。初心者には...

自己嫌悪 (7月 7日)

 幸運にもバスはブレーキが効く前にエンストした。  丘の中腹に乗りあげて停まったとたん、「静岡強いなあ」と  声をかけて...

Y字路に突っ込む (7月 6日)

 ふたりの男はそんな空気などおかまいなしに話している。 「あ、そうだ。だいじょうぶかなあ、俺」 「どうしたんだよ?」 「...

第10章 運転手失格 ~噂話 (7月 5日)

ラジオから甲子園の高校野球中継が流れていた。 中継があると土工たちはラジオに気をとられて、 運転に文句を言ったり、せかし...

爺さんの親切 (7月 4日)

この日、麻井が満期明けになり、私は朝、「みんなで飲んで ください」と2000円をあずかった。麻井は苦手だったが、 過ぎて...

1日で消えた男 (7月 3日)

 土工たちが噂を聞きつけて、小屋のまわりをとりかこんだ。  菊地は小屋のそとに出て、彼らを招いた。 「どうぞ、みなさん飲...

命の氷 (7月 2日)

「氷買いに行きましょう」 「氷、ですか?」  私は疲れているので動きたくなかった。  気乗りのしない私を彼はせかした。 ...