2007年06月21日
去る者、戻る者
朝飯をすませた平松が作業ズボンのポケットから
小さくたたんだ千円札を出し、私ににぎらせた。
「これ少ないけど、麻井さんと一杯やってよ」
「いや、そんな、せっかく働いた金を悪いです!」
「いいからいいから!」
私は頑強に拒否したが、彼は無理に金をつかませた。
あとで確認すると、2000円あった。
「それじゃあ、元気でやんなよ」
「平松さんも!」
「ああ!」
「いろいろ、ありがとうございました!」
6時過ぎに現場に出て行く私たちを見送ってくれた彼は、
さっぱりした表情で手を振っていた。
あわただしく、あまりにもあっけない別れだった。
一日を終え、部屋にもどると小部屋がやけに広く感じた。
麻井とは最初から会話がぎくしゃくした。
「平松さんが2000円おいていってくれたんです。いっしょに飲んでくれって」
「あ、そうですか」
「僕、酒でも買ってきましょうか?」
「そうですね。せっかくだから菅谷さんでも呼んで」
たしかに菅谷を呼ばなければ、場がもたない。
酒を飲んでも、麻井と私の関係は変わらないだろうが、
ひとときでも部屋を逃げ出せる口実ができてよかった。
そんなことを考えていると、ふいに堀内がそとから顔を出した。
彼は男をひとりつれていた。
「麻井さん、名堀君、お疲れさん! 今日からひとり入るから、よろしくね!」
ひとり出れば、ひとり入ってくる。
そのサイクルのなかで私たちは暮らしている。
「運転手じゃないけど、古株の人だから安心して」
「どうも、三崎です! よろしく!」
男が顔を出し、笑顔で頭をさげた。
遊び人風だが、穏やかな落ちつきが感じられた。
飯場生活7日目05:00-19:00 ~ To be continued
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