2007年06月18日

別れ

「有力者」の部屋は食堂や駐車場に近い順に配置されている。
伊藤・黒谷の部屋、そのとなりが熊沢・古株の土工、
そのとなりが「優遇された運転手」である私たちの部屋だ。
ダンディ熊沢は伊藤の爺さん、黒谷についで飯場のナンバー3
あたりだろう。

麻井のように古株でも運転手でもない者は、
おとなしそうな人間性を見て、同部屋にされたのか。
ふだん無口な熊沢が私に話しかけてきたのは、
彼もまた私に目をかけてくれていたということだ。
それにしても、人づきあいが広くなると、
縦社会ではいろいろ面倒が多くなる。

飯場に帰って、すぐに黒谷の部屋へ行き、今日、
車を変えてくれたことの礼を言い、自分の部屋にもどって
平松にポンコツバスを押しつけてしまったことをあやまった。
自分の知らないところで変わる事態に頭を下げてまわるのは
目をかけられているという喜びもあるが、軽い屈辱感もある。
若いというだけで、そんなに私は弱く見えるのか。

平松はこの日で勤務が15日の満期を終えた。
給料は満期日に出ず、翌朝に受け取るそうだ。

明日で開放される喜びに満ちていた彼にとって、
最後の日にポンコツバスを運転させられたことは
たいしたことでもなかったらしく、笑顔で許してくれた。

「平松さん、いろいろお世話になりました。ありがとうございました」
「なあに。こっちこそ世話んなったね」
「あの、いろいろすいませんでした」
「あ、なにが?」
「あの、最初、緊張してたんで、いろいろ心配してもらったのに、
 妙に突っ張っちゃって」
「へへへ、だれも知り合いがいないんだから、
 だれだってそういうもんさ。気にすんなよ」

      飯場生活6日目13:00-19:30  ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 11:40