2007年06月08日

謎の指示

翌日、現場で聞いたジャイアンツ情報によると、
坊主男が仕事をさぼり、部屋に閉じこもってしまったらしい。
この件で彼は5日間の謹慎処分を受けたそうだ。
5日分の給料が自動的に天引きされるというから、かなりの痛手である。
坊主はこんな調子だから、いつも「金がない」などと、こぼしているのだろう。

この日、定時に作業が終わり、ポンコツバスの運転席に
乗りこもうとしたときである。一昨日、私を怒った口髭の男が近づいてきた。
彼も鳶職なのだろう、ふだん話す機会がない。恐縮して、頭をさげた。

「お疲れさまでした! 一昨日はすいません。ありがとうございました」
「ハハハ、なに、もういいよ」
 彼は手を振って苦笑した。

 それからほかの車のキーを私に差し出した。
「帰りはあっちのバン運転していきなよ。乗せるのは俺だけでいい」
「え?」
 最初、なにを言われているのかわからなかった。
 すこし考えてから、 平松が運転してきた5人乗りのバンを
 運転するように言われているのだと理解した。

「バンですか? でもそれじゃ、ほかの人全部、平松さんが乗せることに……」
「ああ、いいんだ、いいんだ。
 平松さんには話しておいたから。そっちの鍵くれ」
「はあ」
 とまどいつつ渡すと、彼は「おーい、平松さーん!」と
 平松を呼び、下手投げで鍵を投げた。

「平松さん!」
 私は心配になり、鍵を受け取った平松に声をかけたが、
 彼は「いいから、いいから」と右手をあげて笑ってみせた。
 どうやら了解済みのようだ。朝、2台に分乗して16人ほどが
 乗ってきたはずだ。バンに2人しか乗らないと、ポンコツには14人が
 つめこまれる。土工たちが不満を言わないはずがない。
 いったい、この男はなぜこんなことをするのだろう……

      飯場生活5日目08:00-17:10  ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 07:00 | コメント (0)

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