2007年06月06日
ゲイの土工
飯場に着いたのは8時半だった。
「お疲れさん」と事務所から降りてきた堀内が
全員をねぎらったが、だれもウンともスンともこたえない。
私も知らん顔をした。
食堂のカウンターごしに、力士が不機嫌に怒鳴っている。
「おまえら早く食えよ! ここ閉めるからな!」
彼もまた無視された。
風呂に入ると、茨城弁の坊主があとから入ってきた。
彼はこの4日間続けて私のすぐあとに入ってくるのだ。
現場がおなじなので、おなじサイクルで風呂に入るのは
あたりまえだが、行動そのものに妙なものを感じる。
坊主はほかの場所があいているのに、わざわざ
私のとなりに来てシャワーを使い、体を洗う。
そして、石鹸の泡にまみれた垢をシャワーで流すとき、
私のほうにむけてかかるようにしたり、桶であがり湯をかけるとき、
わざと飛沫をかける。いやな表情で見ると、
とぼけた方向を見たまま、薄ら笑いを浮かべている。
帰りの車内では「早くしろ!」とほかの土工たちがさわぐなかで、
急に後部座席から乗りだし、私の顔付近に自分の顔をよせる。
「アンちゃん、事故起こすときは起こすっぺ。ぶっとばせ」
私の首筋に汗と脂で、ねっとりした中年男の顔が突きだされた。
坊主が一日に流した、すえた汗の臭いが漂うほど近く、
唇さえ触れるような距離である。
私はあわてて首を反対にそむけるのである。
この晩も坊主は妙な目つきでこちらを見ていたが、
ほかにも土工がいるので、なにかしてくるわけでもない。
だが、その粘着質の視線からのがれるために、
私ははなれた場所に移動して、下着と靴下を洗った。
飯場生活4日目20:00-21:00 ~ To be continued
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