2007年06月19日

平松、15勝3敗

「平松さん、何勝何敗だったんですか?」
「15勝3敗だねえ」
 土工たちは働いた日数の合計を勝ち数にしていた。
 雨の日は仕事がないので負け数である。
 休みでもシャワー代や飯代だけは引かれてしまうからだ。

「2日間、雨にたたられて18日だからね」
「じゃ16勝2敗じゃないですか?」
「最初の日を忘れてるよ。ヤツらしっかり最初の晩を引くからね。」
「あ、そうか……じゃ、自動的に1敗はつくんですね」
「ああ」
 まだ雨にたたられていない私も5勝1敗である。

 平松はせまいプレハブの室内をぐるりと見渡して、苦笑を浮かべた。
「まったく、こんなとこ18日もいちゃったよ」

「これからどうするんですか?」
 そんな言葉が口をついて出たことに、自分で驚いた。
 ほんの一瞬、おなじ飯場で関わりあっただけの私たちが、
 それぞれの事情を詮索してはいけなかった。
 19歳の私が生意気にも40歳の男の人生を心配する口ぶりにも、
 とられたかもしれない。しかし、私はただ、
 平松が去ってしまうのがさみしかっただけだった。

 彼は自然に答えてくれた。
「うちに帰るよ。A駅だから近いんだ」
「そうですか」
「名堀君、元気でやんなよ。事故だけは気をつけて」
「はい。平松さんもお元気で」

薄汚れた布団に横になり、明日からを思った。
苦手な麻井と2人きりになると思うと、急に心細くなり、
平松の存在の大きさを実感した。
金歯と銀歯を見せながら、平松はいびきをかいている。
その表情が、明日ここを出て行けるという喜びで
いくらかやわらいでいるように見える。
最初からもっと心を開いて、ゆっくり語りあえばよかった。

そんな思いもつかのま、私は眠りに落ちた。

      飯場生活6日目19:30-7日目02:00  ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 10:53 | コメント (2)

コメント

ご無沙汰です。
毎日読んでますよ。
リアルな生き様が伝わってきますね。
期待してます。
それじゃ、またね。

投稿者 新米パパ : 2007年06月19日 18:56

新米パパさんへ

コメントありがとうございます。
毎日ですか、ありがとうございます!
一度にまとめて読んでくださる人もいますし、
どんなペースで読んでいただいてもうれしいんですが、
やっぱり毎日と聞くと、ありがたいですね~
お子さんは元気に育ってますか~?

投稿者 ナポリタカオ : 2007年06月20日 11:16

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