[2007年06月] アーカイブ

牡丹 (6月30日)

金という鎖につながれ、目の前の土を掘る。 私にとっては飯場と現場の往復が社会そのもので、 それ以外は日本といえども外国同...

陸の孤島 (6月29日)

 この日は水路側面にまわされた。針金で編んだ網にグリを  入れる作業だ。グリとは人の拳を3つあわせたほどの砕石である。 ...

背中の向こうに (6月28日)

菅谷を歓迎会に招待するのを忘れていたが、ビールはあっというまに なくなってしまった。私はテレビに近い寝床を三崎にゆずり、...

太腿串刺し (6月27日)

「うわあっ……」  三崎の話を聞いて、私たちは顔をしかめる。  すると彼は傷口をなんどもさすりながら、またニヤリとする。...

11階から転落 (6月26日)

話の流れが暗くなったので、私たちが静かにしていると、 三崎は短パンからむきだしになった、腿の内側を撫ではじめた。 そこに...

第9章 男の背中 ~聞いてはいけない質問 (6月25日)

 麻井が妙に納得した顔で、ぽつんと口をはさむ。 「そういうもんだよね。俺もラーメンの屋台引いてたけど、  毎日ラーメン作...

告白 (6月23日)

 三崎は若い私に興味があるらしく、いろいろ聞いてくる。 「新人さんはいつ満期だい?」 「運転手の15日契約なんで、あと9...

歓迎会 (6月22日)

 堀内がいなくなると、私は声をひそめて三崎に聞いた。 「実は今朝、満期で出た平松さんって人から、2人で飲んでくれって  ...

去る者、戻る者 (6月21日)

 朝飯をすませた平松が作業ズボンのポケットから  小さくたたんだ千円札を出し、私ににぎらせた。 「これ少ないけど、麻井さ...

忍び寄る影 (6月20日)

真夜中。 窓のそとになにか気配を感じて、私は眼を開けた。 半身を起こし、暗い室内から窓に眼をこらした。 逆光の月に照らさ...

平松、15勝3敗 (6月19日)

「平松さん、何勝何敗だったんですか?」 「15勝3敗だねえ」  土工たちは働いた日数の合計を勝ち数にしていた。  雨の日...

別れ (6月18日)

「有力者」の部屋は食堂や駐車場に近い順に配置されている。 伊藤・黒谷の部屋、そのとなりが熊沢・古株の土工、 そのとなりが...

没落した男たち (6月16日)

「なにかあったんですか?」 「ん? まあな……3年もまえの話だけどな」  私も昨夜、食堂で買ったハイライトに火をつけた。...

下っ端の困惑 (6月15日)

「あいつら生意気だろ?」  見ぬかれていた。苦笑するしかなかった。 「はい……」 「高校出たばっかだってよ。バカにしやが...

第8章 去る者、戻る者 ~飯場のダンディ (6月14日)

弁当の飯はいつものように太陽に灼かれ、 できたてのチャーハンのように熱い。 なかで動いているはずの蟻も今日は全部死んでい...

生意気な測量士 (6月13日)

翌日は、サイボーグ老人の三木と工事使用後に散乱した、 鉄棒やベニヤ板をかたづけた。「かたづけ」と聞いたときは 「ようやく...

平穏な帰路 (6月12日)

 さっきとは変わって、おだやかな目で黒谷は聞いた。 「生まれはどこだい?」 「静岡です」 「ああ、静岡かあ」  なつかし...

理解者 (6月11日)

 黒谷は私のそんな反応にとまどったのだろうか、  ひと呼吸おいて、開けた窓に肘をのせ、景色を見た。  しばらくして口を開...

熱い信念 (6月10日)

 黒谷は話題をかえた。 「君はいくつ?」 「19です」 「おう、若いねえ!」 「黒谷さんはおいくつなんですか?」  妙に...

飯場の顔 (6月 9日)

しかし、口髭の男はおだやかだが、ただよわせる 存在感は圧倒的で、有無を言わせない迫力があった。 彼がなにか言えば、みんな...

謎の指示 (6月 8日)

翌日、現場で聞いたジャイアンツ情報によると、 坊主男が仕事をさぼり、部屋に閉じこもってしまったらしい。 この件で彼は5日...

止まらない洗濯機 (6月 7日)

パンツと靴下は風呂に入るときに洗うのだが、 Tシャツとジーンズの汚れは洗濯機でなければ落ちない。 アパートから持ってきた...

ゲイの土工 (6月 6日)

 飯場に着いたのは8時半だった。  「お疲れさん」と事務所から降りてきた堀内が  全員をねぎらったが、だれもウンともスン...

第7章 飯場の顔 ~車内の攻防 (6月 5日)

5時に終了するはずの作業は7時まで伸びてしまった。 残業代が出ないと知っている土工たちは不満を顔に出して 作業に従ったが...

理屈はいらない (6月 4日)

「ちょっと腹が痛いんで、休ませてもらってます」 「なんだと? おめえは腹が痛えかもしれねえが、ほかのだれも  痛えなんて...

糸をひくウインナー (6月 2日)

翌朝、起きると手がグローブのようにむくんでいた。 タヌキの現場は朝6時すぎに出発して、夜は6時30分や 7時に帰ってくる...

震えが止まらない (6月 1日)

「こんなとこで事故したらつまらないよ。気をつけろよ」  強い勢いで怒ったはずの男の目は、次の瞬間にはおだやかだった。 「...