2007年05月29日

獣の休息

「東京はもう35度だってよ!」
 どこでラジオを聴いたのか、ジャイアンツが通りがかりに伝えた。
 たしかに昨日よりも皮膚が灼けていく感じがちがう。
 早くも熱気にやられて、頭がゆらゆらしてきた。
 疲労。腰の痛み。息切れ。
 すべてぼんやりした夢の中のようだ。

 かすんだ視界のなかに、ふたたびジャイアンツがあらわれた。
「午前中にもう2人倒れたらしいぜ!」
 菅谷が突然、作業をやめ、スコップを恨みがましく地面に突き刺した。
「くそったれがー! 今日、海水浴なんか行ってるヤツ、ぶっ殺してやる!」
 それから、天にむかって吼えた。
「太陽なんかなくなっちまえー!」

大木が枝を斜めに広げて、大きな日陰をつくっていた。
その下にだれかが敷いたベニヤ板があった。
ちょうど空いていたので、ちっぽけな煮物と梅干の弁当を
食ったあとで、平松、菅谷、麻井と横になった。

ひどい酷暑のなかでも大木は赤土に根を張り、青々した葉を茂らせ、
生命力を誇っている。そのおなじ土の上に、くたびれ果て、
ぐったり寝ころぶ土工たちがいる。獲物を捕らえられず、
痩せおとろえてしまった孤独な肉食獣の群れのようだ。
しかし、肉体労働ならではの、神聖な休息の空間も感じられた。

 茨城弁の坊主が休憩中の集団をひとつずつまわっていた。
 菅谷がくさくさした口調で言った。
「あのバカ、またやってやがる」
「なにしてるんですか?」
 私が聞くと、彼は坊主の口真似をした。
「『あー金がねえ、金がねえ』……とか抜かして、
 どうせまた、だれかにタバコたかってやがんだろ」
「いつもですか?」
「ああ。2、3回おなじヤツからせびるとイヤな顔されるからな。
 だからあんなふうに、だんだん遠征しやがる。けっ、それもよ、
 人の良さそうな爺さんばっか、狙ってよ」

      飯場生活3日目11:00-12:30  ~ To be continued
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人気blogランキングへ
 ↑ ↑ ブログランキングに参加しています。クリックで応援いただけるとありがたいです。


投稿者 Napori Takao : 09:19 | コメント (0)

コメント

コメントを送ってください




ログイン情報を記憶しますか?

(スタイル用のHTMLタグが使えます)