2007年05月28日

電池切れのサイボーグ

私は菅谷と同じ作業班だったが、メンバーには
昨日の朝、食堂で見た筋肉質のサイボーグ老人が入っていた。

名前を三木と呼ばれていた。驚いたのはその仕事ぶりである。
スコップを入れる、土を掘り出す、土を投げあげる。
彼は素人の私が見ても、ほかの土工たちとはちがい、
スコップの扱い、腰の入れかた、リズム、すべてが一級品だ。

三木の穴掘り作業は一定の呼吸をとり、疲れを知らないかのように、
延々と続くのである。数十年という農作業や土工の暮らしで
身についた呼吸と技術なのだろうか。
私は少し掘っては息切れして、三木の真白に洗濯された
Tシャツの背中を驚嘆と尊敬でながめた。
また、飯場でこんなにきれいなTシャツを着ているのは
彼だけで、彼の背後に見守る家庭の存在を思わせた。
それにしても、どこからこんな力が沸いてくるのか。

ところが、もっと驚いたのは彼の変身ぶりである。
三木はひとたび作業が中断し、スコップをおくと、
虚空を見つめて膝を抱える、貧弱な老人に変わってしまう。
その姿は、まさに電池切れのサイボーグだ。

だれかに話しかけられると、肺をやられている病人のように
ゴボゴボとしゃべるのだが、強い訛と小さい声のために
内容がさっぱり伝わらない。そのことに自分でもどんどん
自信を失っていき、声のトーンが落ちていく。
最後にはひとり言になり、まったく聞きとれなくなる。

私もそうだったが、初めて会話をした者は
誰もが面食らい、あっけにとられ、次からは相手にしない。

気心が知れている青森集団のなかでさえ、浮いた存在になっていた。

      飯場生活3日目10:10-11:00  ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 10:39 | コメント (0)

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