2007年05月22日

疲労と孤独

「おい、おまえら早く食えよ! 食堂閉めるぞ!」
食堂の前で調理人の力士男が怒鳴っている。

不機嫌な土工たちは彼を無視した。
私は車の鍵を食堂の男に返し、部屋にもどった。

麻井に形どおりの挨拶をした。
「お疲れさまでした」
同室なんだし、運転中にすこしはかばってくれても
いいじゃないかと思った。そんな思いは甘えだろうし、
麻井が私をかばう義務もないけれど、私は彼の態度が
許せなかった。自分が同じ立場なら、少しは力になったはずだ。

私は麻井が数日後、満期を終えるまで
意地になって自分から話しかけなかった。このときの
麻井への態度はその後数年、私を自己嫌悪に陥らせた。

食堂は空いていた。遅れたぶん、ピークからはずれたのだ。
さきに降りた連中が飯を食い、大瓶のビールをラッパ飲みしている。
やはり、さっき飲んだビールだけでは足りないらしい。

私は給料から天引きされるという諸式の箱から、
縦5センチ、横2センチほどの短冊をとり、『ビール』と書いて出した。

「これでいいですか?」
力士は答えず、紙を睨みつけた。そして冷蔵庫からビールを
出して栓をぬき、私のまえに手荒くドスンとおいた。
出してやっているという態度だ。未成年だからか?
ふだんならむっとして、反抗的な気分にもなるが、
疲れきった精神と肉体には殺伐とした態度がただやるせなかった。
ここの人間は、どうして他人に思いやりのひとつも示せないのか。
これも東京か。

飯を食い、大瓶のビールをラッパ飲みした瞬間、頭から足の先までの
しぼりきった細胞に、一気にアルコールが広がった気がした。
すさまじい勢いで頭がぐらぐらする。
その感覚はむしろ苦痛を感じるほどだった。

      飯場生活2日目19:40-20:00  ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 10:05 | コメント (0)

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