2007年05月14日

ハイライト

「うまくねえ!」
 菅谷はまた唾を吐き、タバコを見る。
「なんでハイライトしかねえんだよ、チッ!」

 私も昨夜、飯場でタバコを買おうとして、ハイライトしか
 置いていないのを知った。ベテランに聞いてみた。
「なぜなんですか?」
「さあな。いちばん安いからじゃねえか? いろいろ
 そろえるのが、めんどうくせんだろ」
「そうですか」
「ビールだって1種類しかねえだろ」

 吸ってもうまいとは感じられないハイライトだが、
 たしかに好む土工は多かった。
「ハイライトは土方のタバコ」
 べつの中年の土工が、暑さにやつれた顔でつぶやいた。

「ケッ!」
 菅谷がまた唾を吐いた。

作業を再開すると、すぐに汗がしたたりはじめる。
汗に濡れた菅谷のパーマもますます、くしゃくしゃに丸まっていった。
まだ午前中だというのに、もう腰をさすりながら作業をしている。
これで一日、体がもつのだろうか。

昼飯は永遠にやってこないのではないか、と思うほど時間が長い。
時計をなんども盗み見ては、ああ、それでも10分進んでる、
と気持ちをふるい立たせる。作業はタヌキにさんざん
尻をたたかれ、なんとか午前中に終了した。

昼飯は朝、食堂から車に積んできた弁当箱を車まで
各自がとりにいく。赤茶色で蔦のからまるような柄をした、
安物のプラスチック弁当は、炎天下の車のなかで焼けて、
炊き立ての飯をつめこんだように熱かった。
ふたを開けると、佃煮、ちっぽけなコロッケ、白飯だけだ。
白飯の上に黒いゴマが10粒ほど入っている、
と思ったら、それはモゾモゾと動いていた。

      飯場生活2日目10:00-12:10  ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 10:16 | コメント (0)

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