2007年05月10日

飼い犬

タヌキは寺本建設の土工たちへの苛立ちと憎しみが
強いらしく、あからさまに卑下したふるまいを見せた。
「おまえはおまえとこっちのバラ(作業で使用済みの機材、
 木材などのこと)、午前中にかたづけろ! 小屋の脇!
 あそこおいとけ! おいわかんねえのか、おまえだよ、このボケ!」
怒鳴られたのはおとなしい70代の老人だ。
彼は気弱そうに苦笑すると、おとなしい飼い犬のように
うなずいて、背中を丸めて持ち場へむかった。

「おい、おまえ、おまえ、おまえはあっちいけ!」
 タヌキはひとりずつ指さし、猛烈なスピードで仕事を割り振った。
 最後に4人が残った。そのなかには、
 さっきタヌキに毒づいていたパーマの遊び人もいた。

 タヌキの眼が若い私をとらえたとき、
 一瞬、残忍な色に輝いた気がして、ぞっとした。

「おまえらは俺といっしょにこい!」
 水路に降りる傾斜道につれていかれた。
「おい、おまえ、ここに杭を打て!」

 タヌキはベテランらしい50代の土工に命じた。
 彼は要領よく斜面に沿って3メートル間隔で2本の杭を打ち、
 黄色の糸でつないだ。その糸から20センチほど外側に
 また2本の杭を打ち、糸でつなぐと平行な2本の糸ができた。

「よし、張ったあいだを今から掘れ!」
 私達はスコップを持って、掘りはじめた。
 はじめてわずか数秒で、私は怒鳴られた。
「オラおまえ! もっと腰入れてやれ、バカ野郎!」

 地面のすぐ下に木の根が頑丈に張っていて、スコップが
 入っていかないのだ。ベテランもこれにはまいったようで、
 斜面の上に立ち、ふんぞり返って見ているタヌキを仰いで言った。
「これ、なかなか掘れんですよ」
「うるさい! もっとやれ! もっとやってみろ!」
 ただ黙って言うことを聞いていろ、ということらしい。

      飯場生活2日目08:10-08:30  ~ To be continued
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投稿者 Napori Takao : 11:26 | コメント (2)

コメント

私は、スコップで掘ろうとして、
石など異物に当たったときの
ガリって音とあの感触が苦手です。

投稿者 ゆるり : 2007年05月10日 21:47

ゆるりさんへ

コメントありがとうございます。
ゆるりさんも大きなスコップ使うことあるんですね?
ひょっとして大きな庭のあるお宅(ご実家?)だとか?
あれ、イヤですよね~
とくに労働意欲満々で土にガシッとやったときに、
あれで応えられるとなんか、ああっ……
っていう、なんともいえない、
黒板を爪でこするような感覚というか……

投稿者 ナポリタカオ : 2007年05月11日 09:09

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