2007年05月09日
独裁者登場
駐車場に黒塗りのマークⅡが派手に突っこんできたところだった。
ボディは濡れたようにピカピカに光っていたが、
運転していた人間は急ブレーキをかけ、土埃を豪快にまいあがらせた。
またすぐに洗車するのだろうか。
アクション映画のような登場の仕方は演出なのか。それとも、
たんにガサツな人間なのか。
腹の突きでた、40代半ばくらいの男が運転席から降りてきた。
黄色いヘルメットに作業服姿。黒い頑丈そうな腰のベルトから
白い手ぬぐいを通している。絵に描いたような現場監督の風情だ。
ドアをつぶしかねない強烈な勢いで閉めた。
「けっ、もうきやがったぜ、タヌキの野郎」
30代半ばくらいのジーンズを履いた土工が口をとがらせて言った。
パーマをかけ、長髪でひょろひょろ歩く雰囲気は
肉体労働が似合わない、いかにも遊び人だ。
「早えなあ専務、今日は」
ジャイアンツがつづいて言った。
タヌキ専務は腹をゆすりながら、地面を踏みしめてやってくる。
遠くにいて聞こえないのをいいことに、パーマは悪態をついた。
「マークⅡなんか乗りやがってあのデブがよ。
腹ゆらしてねえで、すこしはてめえも働けよ、バカが」
ところが50メートルほどに近づくと、態度が一変した。
「オエーッス!」
パーマは率先して挨拶した。これがこの男の生きかたなのだろう。
見ていると、気の弱そうな男から順に「オエーッス!」と挨拶していく。
顔をそむけて挨拶しない者も何人かいた。
よほどタヌキは嫌われているらしい。
私もこの初日は挨拶をしたが、翌日からしなかった。
挨拶する意味がないという理由もある。タヌキは土工たちが
挨拶するときにはもう大声で怒鳴りたてているからだ。
「おら、てめえら! こっちとこっちにわかれろ!
おい、おまえとおまえ、それからおまえ! こっちだオラ!」
飯場生活2日目08:00-08:10 ~ To be continued
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