[2007年05月] アーカイブ

油断と恐怖 (5月31日)

重い蓋を移動させる作業は統制がとれていなかった。 開始の合図もなく、だれがどう作業にあたるのかの 指示もないまま、クレー...

物乞い (5月30日)

 それから横になったまま、暑さにうつらうつらしていたら、  音もなく私のそばに坊主が立っていた。 「タバコ、めぐんでけろ...

獣の休息 (5月29日)

「東京はもう35度だってよ!」  どこでラジオを聴いたのか、ジャイアンツが通りがかりに伝えた。  たしかに昨日よりも皮膚...

電池切れのサイボーグ (5月28日)

私は菅谷と同じ作業班だったが、メンバーには 昨日の朝、食堂で見た筋肉質のサイボーグ老人が入っていた。 名前を三木と呼ばれ...

消せない過去 (5月26日)

 ジャイアンツはひと呼吸おき、ニヤリと笑い、もったいぶって話しはじめた。 「でな、俺たちもよお、さすがにいつまでもチンタ...

第6章 慣れと油断 ~時速40キロの男 (5月25日)

新車の白いバスは運転しやすく快適だった。 そして、昨日よりましなことが、もうひとつあった。 乗せる土工たちが昨日のうるさ...

新車にときめく (5月24日)

とても小さい音だ。はるかかなたから、ゆっくりと近づいてくるような。 なんだろう。だんだんはっきりしてきた。これはたしか、...

逃げるか、残るか (5月23日)

 そばで飯を食っていた、ほかの現場の土工たちの話が聞こえた。 「おい、知ってるか、昨日入ったあのおっさん」 「ああ」 「...

疲労と孤独 (5月22日)

「おい、おまえら早く食えよ! 食堂閉めるぞ!」 食堂の前で調理人の力士男が怒鳴っている。 不機嫌な土工たちは彼を無視した...

酒屋 (5月21日)

「え?! ここですか?」 「んだ、そこの路肩」  彼らはいつも指示が突然で理由を言わない。  「そこ」とは酒屋の前だった...

猫から虎へ (5月19日)

よろけた足どりで坂をのぼり、くだる。 一輪車を使っていればもっと早くできるはずなのに。 タヌキはなぜ効率を考えないんだ。...

土方の命 (5月18日)

朦朧として歩きながら、スニーカーについている白い粉に気づいた。 よく見ると、Tシャツやジーンズから塩がふき、スニーカーま...

人間焼肉 (5月17日)

スコップ一杯のモルタルを、頂上から溝へ流しこんだ。 作業が進むほど下まで歩いていき、 スコップ1本、ぶらさげて坂をのぼっ...

ささやかな抵抗 (5月16日)

 午後になると、タヌキはべつの傾斜地に私たちを連れていった。  午前中に掘ったのとおなじ溝がすでに掘られていて、  傾斜...

第5章 人間焼肉 ~蟻を食う (5月15日)

「蟻だ……」  顔をしかめた私に、平松がうなずいた。 「山の蟻が入ってくるんだ。車のなかに置いといても  こんな調子だよ...

ハイライト (5月14日)

「うまくねえ!」  菅谷はまた唾を吐き、タバコを見る。 「なんでハイライトしかねえんだよ、チッ!」  私も昨夜、飯場でタ...

遊び人 (5月12日)

ほかの男達はスコップを自分のそばにおいて、 「ああ……」「うーん……」と大きなため息をついて 腰を伸ばし、流れる汗をタオ...

妙技 (5月11日)

 ふたたび掘りはじめたものの、やはり、カチン! カチン! と  刃先が当たるばかりで、スコップは硬い大地に阻まれる。 「...

飼い犬 (5月10日)

タヌキは寺本建設の土工たちへの苛立ちと憎しみが 強いらしく、あからさまに卑下したふるまいを見せた。 「おまえはおまえとこ...

独裁者登場 (5月 9日)

駐車場に黒塗りのマークⅡが派手に突っこんできたところだった。 ボディは濡れたようにピカピカに光っていたが、 運転していた...

巨大な現場 (5月 8日)

寺元建設の土工達は駐車場の奥に向かうので、流れにしたがった。 私は新入りなので、見知らぬ男とすれちがうたびに、 挨拶しな...

不信感 (5月 7日)

車内は息もつけない密室だった。 私は運転のミスや要領の悪さについて、後ろから怒鳴られた。 後方の確認でバックミラーを見る...

罵倒の代償 (5月 2日)

情けなかった。ハンドルを握って1時間もしないうちに、 運転手を引きうけたことを心底、後悔した。 水野も堀内も信用してはい...

第4章 罵倒と独裁者 ~飯場自動車教習所 (5月 1日)

フロントガラスからは、高く設置された信号機の 頭しか見えない。一気に走り抜けてしまいたかったが、 信号は赤に変わってしま...