2007年04月23日
現場の割り振り
朝食は卵、納豆、海苔だけだった。朝の5時に飯を食ったことなどない。
ずっと続いた緊張で胃がもたれ、食欲がわかなかった。
ひどい気分だったが、これから始まる重労働を思うと、
無理にでも飯を咽に押しこまずにはいられなかった。それは正しい判断だった。
私はわずか数時間後、朝飯の大切さを身を持って知ることになる。
土工達は飯を食いながら、食堂を入って正面にある壁を見上げている。
昨夜は気づかなかったが、大きなボードがかかっていた。
縦には『○○建設』『××興業』『△△組』という、現場を管轄する組織名の札、
横には配属される土工名の札がならんでいる。
札は白いプラスチック製で、名前は水性の太マジックで書かれていた。
釘にひっかけてとりはずしできるように、穴があいている。
飯を食いながら平松がいった。
「あそこで自分の名前を確認するんだよ」
自分の名前をさがしたが、数十人もいるので、
見つけるのに手間取っていると、先に平松が見つけたらしい。
「ああ、やっぱりなあ」
語尾に同情の響きを残しながら、苦笑を浮かべた。
「名堀君も古島だあ……」
『古島建設』の左端に私の名前があった。
ほかの現場は5、6人単位だが、ここは大きな現場らしく、
15、6人の名前がならぶ。平松は真ん中あたりだ。
「平松さんもおなじ現場なんですね」
「うん、2台で行くんだよ。あとで駐車場に集まって
現場ごとに点呼するから、いっしょに行こう」
「はい」
新入りの私が左端ということは、ボスが右端のはずだ。
見ると『伊藤』とある。その札はほかのものとくらべると
黄ばんでいて、札ひとつにも年季が入っている。
名前のふちがこすれて、漢字が妙な具合にゆがんでいる。
なんどもかけかえたり、取り外したりするうちに
マジックのはしを指でふきとってしまうのだろう。
飯場生活2日目05:20-05:40 ~ To be continued
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